空き家を所有している人はそもそも「余裕のある人」だと、上田さんは指摘する。

「空き家を所有するには税金もかかりますし、管理費用もかかります。でもお金にそんなに困っていらっしゃらない方であれば、残しておいても自分たちが困ることはない。だからとりあえずは“現状維持”ということになり、空き家になるのです」

 空き家の多くは、もともとは自分の実家であったりする。そうすればそこには親との思い出もあり、処分に二の足を踏んでしまうのが世の常だ。

「親が亡くなるまで手放さなかった家やモノを子どもである自分たちが処分していいのかどうか、親が亡くなって初めて皆が悩むのです」

 空き家を増やさないようにするためには、やはり親が元気なうちに家、親の所有物を親の死後にどうするか、話し合っておくことだ。

「できれば親が60代くらいのうちに子どもと話し合いを始めるほうがいいと思います。1回の話し合いでまとまるような話ではありませんから、自分たちの死後の話であってもタブー視しないでコミュニケーションをとっておくことが大切です。そして親は子どもたちの考えをきちんと理解すること、子どもたちも親の思いを受けとめながら、その中で妥協点を見つけておくことが理想的です」

 家の活用方法は、実にさまざまだ。そこに家族の誰かが住むこともできるし、家族が住まなくても建物を守りたいのであれば、そこをリフォームして人に貸すという方法もある。建物ではなく土地を守りたいのであれば、家を解体して駐車場として人に貸す方法もある。また、もし親にも子にも活用の意思がないのであれば、売却という選択肢もある。選択肢はいろいろあるが、「結局どうする」という話の筋道は、親の生前に家族で整理しておくのだ。

 そしていざ親から家を相続したときは、遺品の整理はきちんと期限を決めて行うようにする。

「まあ少しの間は置いておこうよ、と何も決めないでいると、結局は考えること自体が億劫になってしまい、それが空き家の放置につながっていきます。まずは、『遺品の整理は今年中』等の期限を決め、そのあとの家の活用プランも軌道に乗せていくことが大事です」

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