国土交通省の2014年の「空家実態調査」によると、取得した空き家を空き家にしておく最多の理由は「物置として必要だから」だった。写真はつけ火で火事になった空き家 (c)朝日新聞社
国土交通省の2014年の「空家実態調査」によると、取得した空き家を空き家にしておく最多の理由は「物置として必要だから」だった。写真はつけ火で火事になった空き家 (c)朝日新聞社
総住宅数、空き家数及び空き家率の推移 (週刊朝日 2019年3月1日号より)
総住宅数、空き家数及び空き家率の推移 (週刊朝日 2019年3月1日号より)

 日本全国の空き家の数は、右肩上がりで増加している。空き家は物件そのものが犯罪に利用されることもあれば、その周囲に被害をもたらすこともある。“どうせ誰も見ていないから何をやっても平気だろう”などと舐められることがないよう、今後の防犯対策を考える。赤根千鶴子氏がレポートする。

【図表で見る】総住宅数、空き家数及び空き家率の推移

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「あれっ、なんでこんなところに傷が?」

 首都圏に住む副島悦子さん(仮名・56歳・会社員)はある朝、部屋のブラインドを上げたとき、ガラス窓に小さな傷ができているのを見つけた。縦1.5センチ×横2センチほどのひび割れである。

 だが、ちょっと待て。窓のクレセント錠の位置を狙ってわざわざつけられた傷とも見えなくはない。しかもよく見れば、その部分を中心に細かいギザギザが幾重にも広がっている。副島家の窓ガラスはすべて防犯ガラスである。石やボールが飛んできたぐらいでは、こんな傷はつくわけがない。夫と相談して、副島さんは警察に電話をした。事態はすぐさま専門家によって解析された。副島さんは空き巣未遂の被害を受けたのだ。

 ガラス窓は外からバーナー等で焼きあぶられた形跡があるという。そのあと、そこは金づちなどでたたかれたらしい。だが防犯ガラスゆえ、小さな傷しかつかない。そこで侵入を企んだ輩は何を思ったのか、バールで窓をこじ開けようとしたらしい。片方の窓のヘリに、これまたグニャリとした傷跡が残っている。

 夫は普段在宅で仕事をしているので、家は人が不在になることはまずない。傷つけられた窓のある部屋は夜は煌々と明かりがついている。その時間帯に家に侵入するのは、まず無理だ。ということは、昼間か。昼間たまたま人が不在になったわずかな隙を狙ったのか。

「狙われた部屋を見下ろす位置に立っている家が2カ月ほど前から“空き家”になっていて気になっていたんです。最近、町内全体に空き家が増えていて、他のお宅の空き巣被害の話を聞いたばかりでした。まさか、うちが? お金も置いていないし、お金になるようなものも何もない家なのに、手当たり次第なのかしら。

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