腰部脊柱管狭窄症の手術は、神経の圧迫を取り除く「除圧術(神経除圧術)」と、除圧に加えて骨と骨の間を金属のスクリューなどで固定する「固定術(脊椎固定術)」の二つがある。今回は固定術について解説したい。
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固定術には、大まかに分けると次の三つの方法がある。椎体という腰の支柱になる大きい骨どうしを固定して安定させる「椎体間固定術」、腰の斜め後ろにある関節周辺を固める「後側方固定術」、真後ろにある突起状の骨などを固定する「後方固定術」だ。
よく実施されているのが「椎体間固定術」で、このなかにも「どこから切開するか」というアプローチ(進入)において前方・側方・後方という三つの方法がある。
このうちもっとも多いのは、背中側を切開し椎間板を摘出して人工骨や患者自身の骨を移植する「PLIF(プリフ/後方進入椎体間固定術)」と呼ばれる手術法だ。
最近ではからだの真横や斜め前方から進入して椎間板を摘出し、これまでより大きなケージ(プラスチックや金属でできた箱)に骨を詰めて移植する「LLIF(リリフ/側方進入椎体間固定術)」という方法が登場している。この新しい方法は、日本では2013年に導入されてから年々増加している。いずれの方法も体内にスクリューやロッドを入れて手術直後から固定した箇所を安定させることで、術後早期に歩けることを目指している。
脊椎(背骨)の専門病院では前述のようなさまざまな術式が実施できるが、病気の種類や範囲によってこの2種類の術式を使い分けているところが多い。横浜南共済病院で整形外科部長・脊椎脊髄センター長を務める三原久範医師は「PLIF」を、和歌山県立医科大学病院で整形外科主任教授を務める山田宏医師は「LLIF」を実施することが多いという。
また「後方固定術」も含めたこれらの固定術に際して、経皮的にスクリューやロッドなどの金属を設置する「MISt(ミスト/低侵襲脊椎固定術)」という方法がある。いずれにしてもからだになるべく負担をかけないような方法が各院で模索・実践されている。