ミシュランの星を取った人気のレストランのシェフたちも、人生かけて料理を作っている人が多いと思う。が、僕らが何気に安く食べているコンビニの弁当などに魂削って勝負している人たちもいる。

 僕より年下だけど大好きなAさんという男性。豪快さと知恵を兼ね備えた、とある会社の社長さん。とてもおもしろい。例えるなら市川海老蔵さんのような男性。

 昨年、Aさんにご飯に誘われた。有名なうなぎ屋さんで、1年待たないと予約が取れないということらしい。正直、僕の舌でそのうなぎの味が理解できるかと不安に思っていたのだが。うなぎを待っている間、Aさんがカレーチェーン「CoCo壱番屋」のことを熱く語り始めた。カレーの味のすごさから、オペレーション、値段のことまで。グルメが食通であるとするなら、僕はAさんこそ本当のグルメなんじゃないかと思った。そしてAさんがすすめるうなぎ、僕は演技することなく、おいしいと言えた。

週刊朝日  2019年2月15日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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