私自身はタバコを吸いません。学生時代に一度試してみましたが、2~3回吸ったところで咳き込んでしまいました。それ以来、吸っていません。別にタバコが体に悪いとか考えたわけではなく、持ち歩いて、一回一回火をつけるのが面倒に思えたのです。面倒くさがりの性格がタバコに合わなかったのでしょう。

 といって、タバコを嫌っていたわけではないのです。若い頃、病院での待機中によく麻雀をしましたが、周りはタバコの煙だらけでした。それは別に苦になりませんでした。

 タバコを敵視しているわけではないので、愛煙家の気持ちもわからないではありません。がん患者さんの中には、体に悪いとわかっても、タバコをやめられない人がいるのです。そんなご主人を持つ奥さんから、「先生、叱ってください」とよく言われます。

 でも、一日3本のタバコを楽しみにしていると聞くと、叱る気になれないのです。朝起きて、今日はこの3本をどのあたりで吸おうかと考えるのは楽しいでしょうし、それがあと2本、あと1本となると、楽しさが増すでしょう。まさにこれは心のときめきです。

 タバコの害よりも、心のときめきによる生命力のアップをとるかどうかは、その本人の判断によります。

週刊朝日  2019年2月8日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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