「学会では、いかに質の高い乳房再建術をおこなうかについて議論され、認定施設の選定なども担っています。課題は山積ですが、ここに参加している先生方は乳房再建に対する意識が高い人が多いです」

 患者がじっくり検討して決断しなくてはならないこともある。インプラントにするか自家組織を使うかの選択や、同時再建を受けるのか時期をおいて2次再建にするのかという手術を受けるタイミングなどだ。

「現在は、乳がんの手術のときにエキスパンダーを入れる同時再建が多くなっています。手術から目が覚めたときに胸のふくらみがあるという安心感があり、患者さんにとっては好ましいでしょう」

 近頃は乳腺外科医も積極的に同時再建を勧める傾向だという。それはけっして悪いことではない。しかし、じっくり考える時間を持ち、2次再建を受けるという選択肢もあると岩平医師は話す。

「手術の時点では、乳がんのことで頭がいっぱいで再建の説明をきちんと理解していなかったり、自分の希望を的確に伝えられなかったりすることもあるでしょう。慌てて受けずに、自分の思い描く治療後の姿、ライフスタイルをしっかり考慮して決めたほうが後悔はないと思います。抗がん剤治療など手術後の治療が一段落してからじっくり選んでも遅くはありません。ご自分にとって満足のいく結果を得るためにはどうすればいいか、よく考えて決めてください」

 乳腺外科の主治医に、あらかじめ相談するのもいいと岩平医師は話す。

「手術からその後の治療までずっとつきあうのは乳腺外科の先生です。患者さんの立場を理解して冷静にアドバイスをくれる先生は、きっといると思います」

 人工乳房再建、自家組織再建にかかわらず、個々の患者の胸の状況、がんの治療状況、ライフスタイルなどトータルに配慮して手術法を選定し、いかに質の高い再建手術をするかは、医師の技術と熱意にかかっている。そういう技術と熱意を持った医師のもとで、後悔のない手術を受けてほしいと岩平医師は強調した。

(文/伊波達也)

※週刊朝日1月18日号から