「いずも」型護衛艦の空母化に関して、ジャーナリストの田原総一朗氏はその危険性を指摘する。
* * *
安倍内閣は12月18日に、「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画(中期防)」を閣議決定した。
その中で、少なからぬ新聞、テレビが問題としたのは、海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を改修し、戦闘機が離着陸できるようにするという方針を打ち出したことだ。
その結果、能力上は日本の遠洋からミサイルを積んだ戦闘機を飛ばせるようになる。日本政府は、これまで一貫して、自衛のための必要最小限度を超える攻撃型空母は憲法上保持できないとしてきた。しかし、短距離で離陸し、垂直着陸ができる米国製の戦闘機F35Bが使えるようになるということは、あきらかに空母化である。そして、運用次第では攻撃型空母に転化することができる。
政府は一貫して、日本は専守防衛に徹していて、他国から攻撃を受けた場合に、自衛隊は“盾”となって防衛し、“矛”の役割を担って反撃するのは米軍だと言い続けてきた。憲法9条のもと、日本の役割は限定されているというのである。
「いずも」の空母化が、憲法違反ではないか、という批判が起きるのを恐れてか、中期防では次のように説明している。
「いずも」は、改修はするが、普段は対潜水艦哨戒ヘリを搭載し、戦闘機は必要な場合だけの運用だから攻撃型空母ではない、というのである。
岩屋毅防衛相も、記者会見で、「専守防衛の範囲内だ」と強調した。
だが、岩屋防衛相の説明はあまりに抽象的で何の根拠も示しておらず、中期防の言い分は多くの国民にとって詭弁としか聞こえないであろう。
実は、東西冷戦が終わった後、日本では二通りの意見が生じた。
一つは、日本自立論であった。
冷戦の時代は、敵はソ連で、戦って勝てるわけがない。だから米国に日本を守ってもらうしかなかった。そして米国に安全保障を委ねているのだから、対米従属でいくしかなかった。だが、冷戦が終わり、ソ連が敵ではなくなったのだから、対米従属にピリオドを打ち、日本は自立すべきだという意見である。リベラル派の人々は、概ね自立論であった。