カナダで12月に開かれた「グランプリ(GP)ファイナル」で初優勝した紀平梨花 (c)朝日新聞社
カナダで12月に開かれた「グランプリ(GP)ファイナル」で初優勝した紀平梨花 (c)朝日新聞社

 フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナル女子で、紀平梨花(16)が優勝した。初出場で優勝した日本人選手は、浅田真央以来13年ぶりだ。

 元フィギュア日本代表の渡部絵美さんは、紀平の演技を浅田と重ね合わせた。

「フリー出だしのトリプルアクセル(3A)で、着地ミスをした。引きずってもおかしくないのに、よく修正しました。浅田さんも確か世界選手権で初金メダルをとったとき、3Aで派手に転びました。それでも、立て直して優勝しました」

 元フィギュア日本代表の村上佳菜子さんもこう話す。

「冒頭の3Aの後につけるはずだった3回転トーループがつけられず単独になってしまいましたが、そこで跳べなかった3回転トーループを3回転ルッツの後につけた修正力と体力が素晴らしい。しかも3回転ルッツは難しいジャンプ。そこにつけるという精神の底力も感じます。ジャンプのリピートもちゃんと考え、かぶらないようにした賢明さも垣間見えました」

 観戦したスポーツライターも、修正力をこう語る。

「紀平選手は演技がボロボロになるときがあります。ジャンプの失敗でやばいなと思いましたが、よくがんばりました。羽生結弦選手のように精神力が強いわけではなく、カメラの音で演技が左右されることもある。『そんな自分が嫌』と言っていましたが、試合を重ねて変わりました。ミスしても立て直せる能力は周囲の指導というよりも、自ら習得したように感じます」

 紀平はすでに当時の浅田以上の実力との声もある。「ジャンプの際の体の軸がしっかりしています。身体能力、演技力、技術力など既に上回っているのではないでしょうか」(渡部さん)

 フィギュア界のポスト浅田として注目され、4年後の北京五輪での活躍も期待される。浅田が逃した五輪での金獲得を果たせるか、北京への道のりに注目だ。(本誌・大塚淳史、大崎百紀)

週刊朝日  2018年12月28日号