帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
写真はイメージです (c)朝日新聞社
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 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「怒りと認知症の関係」。

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【ポイント】
(1)老いとともに怒りっぽくなる人が少なくない
(2)怒りっぽい人と認知症の関係が推測できる
(3)大切なのは怒りの感情を生み出さないこと

 かつて都立駒込病院で外科医として手術に明け暮れていた頃、看護師さんの間で私は「ほとけのおびっちゃん」と呼ばれていました。私が怒った姿を見たことがないというのです。

 そして何年かすると今度は、「帯津先生は実は、ほとけでなく、ほっとけのおびっちゃん」だと囁かれるようになりました。これは、何でもあれこれ言わずに、ただ放っておくという意味なのです。

 私は、こうでなければならないとか、これだけは譲れないということは極めて少ないと考えています。ですから、大抵のことはどちらでもいいのです。「ほとけの」と言われると面映ゆいので、「ほっとけの」と言われると気が楽だと思いました(笑)。

 貝原益軒も『養生訓』のなかで述べていますが、老いとともに怒りっぽくなる人が少なくありません。かつての仲間が80歳近くになって怒りっぽくなったのを見て、「認知症になるんじゃないかな」と思うことがあります。怒りっぽい人と認知症の関係を示す統計的なデータがあるわけではないのですが、関係を推測することはできます。

 心のときめきが自然治癒力を高める最大の要因であることは、再三、話してきました。この心のときめきは、怒りとは共存できません。だから、怒りが多ければ、それだけ心のときめきのチャンスが少なくなってしまうのです。ひいては自然治癒力も衰えて、大脳の認知機能も低下することになるだろうと思うのです。

 また、怒りは自律神経のうちの交感神経を活性化させます。それによって副交感神経とのバランスを崩すことになります。このアンバランスが自律神経の高次中枢である視床下部を経て、大脳皮質に伝えられ、その機能を乱すことは、十分に考えられるところです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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