「検査をすることで、補聴器の効果があるかどうかがわかるため、最初に補聴器を装用するときやトレーニングの途中、トレーニングの終了時などには補聴器適合検査をすることが必須です」(同)

■誤解(4)つければ聞こえていたころの聴力が100%回復する

「補聴器は、『聞こえを100%元の状態に戻す』ものではなく、今残っている聴力を最大限に生かし、快適に会話や生活ができるように『聞こえを補うもの』と理解してほしい」と新田医師は話す。残念ながら、補聴器をつけても昔と全く同じように聞こえるようにすることは困難といえる。

 例えば、補聴器をつけなければ大きな声で正常な人の70%程度、普通の声だと50%以下しか聞き取れない場合には、補聴器を使っても普通の声で100%聞き取ることは難しい。目標は、補聴器によって普通の会話を70~80%程度聞こえるようにすることとなる。

 補聴器を装用することでどの程度聞こえが改善するかは、その人の難聴の程度や聞き取りの力によって異なるが、言葉の聞き取りの検査の結果がその目安となる。

■誤解(5)補聴器は大きくて目立つのでカッコ悪い

「目立つ」「カッコ悪い」など、外見上の理由から補聴器に抵抗感を持つ人も少なくない。一昔前の補聴器へのイメージはそうだったかもしれない。しかし、現在では驚くほど小型化が進み、デザインやカラーバリエーションも豊富になっている。

 補聴器には耳の穴に入れるタイプの耳穴型と、耳にかけるタイプの耳かけ型などがあるが、耳穴型の中には、耳の中にすっぽり入り、外見上は補聴器を装用していることはほぼわからないタイプもある(ただし難聴が軽度の人のみに適応)。耳かけ型も、近年では以前に比べ驚くほど小さくなっている。とくに2006年ごろには、それまで補聴器本体の中に入っていたレシーバー(スピーカー)を耳栓の中に入れるRICタイプの耳かけ型補聴器が誕生。耳かけ型でもつけてしまえばあまり目立たない。色の種類も多く、ファッショナブルなデザインのものも販売されているため、その進化を一度見てほしい。

 見た目だけでなく、デジタル化による細やかな音の調整、雑音やハウリングの抑制など性能も向上しているため、自分の聴力に合った補聴器を購入し、適切な調整とトレーニングをすれば、快適な聞こえが得られる人も多いだろう。(ライター・出村真理子)

週刊朝日  2018年11月30 日号より抜粋