「浪越式では、膝裏には3、腿の裏には10の指圧点があります。そこをしっかりほぐしましょう」

 受け手にうつぶせになってもらい、胸や足の下に座布団などクッションになるものを入れる。

 最後は80代。この年代にもなれば膝は痛み、つまずきやすくなる。膝の外側にある少しへこんだくぼみ(足三里)からくるぶしまでの筋肉のラインを押そう。

「ツボにこだわらず、神経や筋肉を重要視するのが浪越指圧の伝統的な考え方です。このラインを押すと、『前脛骨筋』というつま先を上げる筋肉に刺激が与えられます。ラインが見つけにくい場合は、つま先を立ててみるとわかりやすい」

 受け手に背もたれのある椅子に深く腰掛けてもらい、やる側は前で片膝をついて片足ずつゆっくりやっていく。

 この年代には手と指の指圧も効果的だ。一人でもできる“ちょこっと指圧”がある。

 手の甲は骨と骨の間を押す。親指の先を手首のほうに向け、ほかの4本の指で挟むようにする。手のひらは中心部を縦に3点押す。これも親指とほかの4本の指で挟むようにして、3回くらい繰り返す。指は上下や側面部分を、親指と人さし指で挟み込むように押す。

「お年寄りには手のひらの指圧はとくに有効です。血流が改善しリラックスできます。手は神経が敏感なところなので、触れるだけでも効果がある。手は比較的安全な部位ですが、リウマチなどで指が開かない人は無理せずに」

 年代別に紹介してきたが、押す場所が正確にわからないという人もいるだろう。高橋さんは、「あまり難しく考えなくていいんです」と呼びかける。浪越指圧の誕生の原点は、リウマチの母親の痛みを和らげたいという思いだった。受け手が“つらい”と感じるところを押すだけでも良いのだ。

 指圧は特別な道具や知識がなくてもできる。今日から始めてみませんか。(本誌・大崎百紀)

※週刊朝日 2018年11月16日号