また、認知症の薬による治療は早い段階で始めるほど効果を発揮しやすく、進行すると効果を期待できなくなります。

【性格の変化】

■相手に配慮できず自己主張が強くなる
「社会的認知」という認知機能の低下による症状。社会的認知とは、表情や言動、行動から相手の意思を推測し、円滑な人間関係を築いていくために必要な認知機能のこと。これが低下するといわゆる“空気が読めない”状態になり、自己主張だけをくり返すようになって対人関係、対社会に支障が出てきます。

■些細なことで怒りっぽくなる
老化によっても体力が落ちたり、体調がよくなかったりすると思い通りにならないことが増え、イライラして怒りっぽくなることはよくあります。認知症の場合、脳に障害がある部位によって、感情をコントロールできなくなり、些細なことで激しく怒ることがあります。また、認知機能の低下による不安が怒りにつながることもあります。

■自分の失敗を人のせいにする
認知症では、自分のものをどこかに置き忘れて探しまわることがよくあります。それを「盗まれた」と言ったり、見つかると「誰かがここにしまったんだ」と疑ったり、人のせいにする傾向があります。ものごとを自分の都合のいいように言うことは、「自己有利の法則」といって認知症の症状の一つです。

【日常生活の変化】

■同じことを何度も言ったり聞いたり、したりする
もの忘れは、ほとんどの認知症の人に出現します。特に新しいできごとを覚えておくことができないので、食事をしたばかりなのに「ごはんはまだ?」と催促したり、「今日は何曜日?」と繰り返し質問したりします。「いま切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる」「いつも探し物をしている」といったこともよく見られます。

■時間や場所がわからなくなる
時間、場所、人物に対する認識が薄れるのは、中核症状の一つである「見当識障害」の症状です。約束の日時や場所を間違えるようになったり、季節がわからなくなって、季節外れの服装をしてしまったり、慣れた道で迷ったりすることが重なると家族や本人が「あれ?以前と何かが違う」と漠然と不安を抱えるようになります。

料理、片づけ、計算などのミスが多くなる
実行機能の障害によって、運動機能には問題がないのに目的に沿った行動ができなくなります。例えば料理をする場合によくあるのが、手順を思い出せないために時間がかかったり、味付けが変わったりすること。また、二つのことを同時にすることが難しいので、一度に2、3 品の料理をつくろうとすると焦がしてしまうこともあります。

■趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなる
意欲の低下や興味の喪失は、認知症の初期に見られる抑うつ症状によるものです。長年続けてきた趣味をやめたり、毎朝必ず見ていたテレビ番組を見なくなったりしたら要注意です。認知機能の低下によって、今までできていたことができなくなったり、番組の内容をうまく理解できなくなったりすることも原因の一つといえます。

次のページ
からだの変化は?