江波杏子さん(c)朝日新聞社
江波杏子さん(c)朝日新聞社
1968年、「女賭博師」シリーズに出演していた頃の江波杏子さん(c)朝日新聞社
1968年、「女賭博師」シリーズに出演していた頃の江波杏子さん(c)朝日新聞社

 映画「女賭博師」シリーズなどで活躍し、数多くの映画でヒロインとして親しまれた女優の江波杏子(えなみ・きょうこ、本名野平香純<のひら・かすみ>)さんが10月27日、肺気腫(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪のため東京都内の病院で死去した。76歳だった。

【写真】「女賭博師」シリーズに出演していた若かりし頃の江波杏子さんはこちら

 1959年に大映に入社した江波さんは、66年に出演した映画「女の賭博」の女賭博師役が大ヒット。以降、「女賭博師」はシリーズ化され、大映の看板女優としてスターの道を歩んだ。近年も2016~17年のNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」では、ジャズ喫茶の女主人役で出演していた。

 肺の機能が衰える慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、たばこなどの有害物質の長期吸入によって生じる肺の病気だ。空気の通り道である気道(気管支)が狭くなり、濁った体内の空気を吐き出すのが難しくなる疾患。正常な呼吸ができず、濁った空気がたまり息苦しくなる。20年以上喫煙していると発症しやすいため、早い人では40代で発症する場合もある。別名「たばこ病」と言われ、患者の80%以上は喫煙者だ。今年7月には演芸番組「笑点」の終身名誉司会者でもあった落語家の桂歌丸さんも、このCOPDで亡くなった。2020年には世界の死亡原因の3位になると予測されていて、国内の潜在患者数は約620万人とされている。だが、治療を受けているのはその中のごく一部とも。

 聞き慣れない「急性増悪」だが、「増悪」とは、インフルエンザや風邪など呼吸器の感染症がきっかけでCOPDの症状が一時的に悪化し、全身におよぶ状態をいう。このCOPDは、早期発見と禁煙、薬物療法で症状をおさえられるようになってきている。呼吸法や運動療法などで構成される呼吸リハビリテーションを実践することで、治療効果はさらに上がる。ここでは、COPDのメカニズムと治療効果について解説する。

*  *  *

 正常な呼吸が難しくなる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の発症原因はたばこであり、病気の進行を加速させる因子でもある。COPDは息を吐くのがつらくなる病気のため、1秒間で最大に吐き出せる息の量(1秒量)を調べて診断する。1秒量は年齢と性別、身長によって予測値が設定され(身長170センチの50歳男性で約3500シーシー)、COPD患者は健康な同世代の値を大きく下回る。1秒量は年齢とともに非喫煙者でも年間30シーシー程度減るが、喫煙者の年間減少量は50~60シーシーと倍近くになる。

次のページ
階段を上るときに息切れ