松岡内科クリニック院長の松岡緑郎医師は、1秒量とCOPD症状の関係性について説明する。

「一般的に1秒量が1500シーシーを切ると階段を上るときに息切れを感じ、1000シーシーを切ると平地で息切れが起きるなど、酸素吸入が必要な症状が見られるようになります。COPDになると1秒量の年間減少量はさらに増えるため、1500シーシーの人がたばこを吸い続けると、早いと3年余りで1000シーシーを切る可能性があります」

 禁煙することで肺の機能が改善し、1秒量の年間減少量は健康な人と同じレベルに戻すことができる。

「最近の吸入薬を中心とした治療をおこなえば、1秒量1500シーシーで治療を始めた患者さんが、1年後には1700シーシーに改善することもめずらしくありません」(松岡医師)

 1秒量1700シーシーでは息切れがほぼなくなり、息切れするから動かないという生活に終止符を打てる。

 COPDと診断された軽症から重症の患者まで、常に有効な治療として位置づけられているのが呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)だ。呼吸器の病気の進行を防ぎ、患者の健康状態を回復・維持させることを目的とする。

■筋力・メンタルにも有効な呼吸リハビリ

 医師、看護師、理学療法士などのサポートのもとに、運動などのメニューを、患者が普段の生活の中に取り入れて実践していく。欧米では早くからCOPD治療に導入され、呼吸困難や筋力・持久力を改善させた。生活の質や増悪頻度、メンタル面にも好影響を与えることが明らかになっている。

 聖カタリナ病院院長の蝶名林直彦医師はこう話す。

「肺の機能検査や、時間内歩行試験で歩ける距離、体内の酸素の使用状態などを調べて、個々の患者さんに合わせたメニューを組みます。重要なのは患者さん本人がCOPDという病気を知り、自ら積極的に治療をおこなうようにしてもらうことです」

 時間内歩行試験とは6分間できるだけ長い距離を歩いてもらい、その距離などをみるもの。健康であれば600メートル前後は歩けるが、COPD患者の平均距離はおよそ350~400メートルと短い。薬物療法や呼吸リハに取り組むことで歩ける距離が長くなるため、治療効果の指標や継続のモチベーションにつながる。呼吸リハのメニューは患者によって異なるが、重症度が目安になる。

「おおまかですが、軽症から中等症の場合は、無理のない歩行を中心とした全身の持久力と筋力トレーニングからなる運動療法をおこなってもらいます。重症の場合は呼吸法や軽いストレッチでこわばった筋肉の緊張を緩めることから始めていきます」(蝶名林医師)

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