息を吐くことがつらくなるCOPD患者に合った呼吸法として「口すぼめ呼吸」がある。息を吐くときに口をすぼめてゆっくり吐くことで、細くなった気管支が少し膨らんで、楽な呼吸ができる。

 COPDの治療として呼吸リハが定着している欧米の研究で、適切な呼吸リハの実践は、酸素ボンベが必要な重症例に対しても、呼吸困難の軽減や身体活動性を改善させるなどの効果があることが証明されている。現状、多くの施設が増悪などで入院した患者を対象におこなっているが、外来で呼吸リハを指導する施設はそう多くない。

「日本呼吸ケア・リハビリテーション学会のホームページで実施施設を紹介しています。要介護認定を受けている人はケアマネジャーに相談すれば、介護保険の範囲内で調整し、デイケアサービスとして受けられることもあります」(同)

 松岡医師は、外来の呼吸リハに参加できない患者に対して、心掛けている声かけがあるという。

「呼吸は吐くことを意識することと、できたら週に3回以上、1日40分歩いてほしいということです。息が切れたら休んでもかまいません。ゆっくりと長い運動を継続しておこなうことが、酸素ボンベを使わない生活につながります」

■機器の進歩によって酸素の利便性向上

 自宅にこもりきりの生活で、風邪が治らず病院を受診したところ、酸素吸入が必要な重症例として見つかるケースも少なくない。自宅や外出時に、酸素ボンベで持続的に酸素を吸入する在宅酸素療法は、現在全国で20万人がおこなっている。最も多い導入の原因はCOPDだ。

「在宅酸素療法の周辺機器の改良で、より小さな酸素濃縮器や酸素ボンベが長時間使えるようになっています。酸素を吸いながらでも身体活動を少しでも上げるように心掛けてほしいです」(蝶名林医師)

 COPDの症状で息切れなどが急激に悪化する「増悪」があるが、禁煙とともに取り組みたいのがインフルエンザと肺炎球菌のワクチン接種だ。インフルエンザや肺炎にかかって、そのまま命を落とすCOPD患者も少なくない。

「感冒や感染症にかかることで増悪が起こります。手洗い、うがいなどの一般的な風邪対策に加えてワクチン接種を受け、増悪の回数を減らし、なくすことがこの病気の管理のポイントです。増悪は身体活動性を低下させ、病気の進行や死にも直結することを知ってほしいです」(同)

 酸素ボンベを抱えた生活にならないためにも、COPDのサインを見逃さないようにしたい。

◯松岡内科クリニック院長
松岡緑郎医師

◯聖カタリナ病院院長
蝶名林直彦医師

(文/山崎正巳)

※週刊朝日11月9日号の記事に加筆