渾身の“緊縛ミステリー” 中村文則「経験ある人はぐっときます」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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渾身の“緊縛ミステリー” 中村文則「経験ある人はぐっときます」

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仲宇佐ゆり週刊朝日#読書

中村文則(なかむら・ふみのり)/1977年、愛知県生まれ。2002年『銃』で新潮新人賞を受賞し、デビュー。05年「土の中の子供」で芥川賞。10年『掏摸〈スリ〉』で大江健三郎賞、英訳がウォールストリート・ジャーナルの12年年間ベスト10小説に(撮影/小山幸佑・写真部)

中村文則(なかむら・ふみのり)/1977年、愛知県生まれ。2002年『銃』で新潮新人賞を受賞し、デビュー。05年「土の中の子供」で芥川賞。10年『掏摸〈スリ〉』で大江健三郎賞、英訳がウォールストリート・ジャーナルの12年年間ベスト10小説に(撮影/小山幸佑・写真部)

 それにしても、どの部分を切り取っても濃密な世界が描かれているのに一気に読めるのはなぜなのか。途中で「中心」が入れ替わる斬新な構成に加え、文章に細かい工夫がなされていた。

 例えば、「そうしている」の「い」を取って「そうしてる」にする。文章が「る」「く」で終わると速くなるから、バランスを考えてリズムをよくする。小説全体が長くなり過ぎないように短い言葉を選ぶ。

「短く的確に表現すると物語にリズムが生まれる。すると小説が生きものみたいに動き出す。読む人は、どんどん読みたくなる快楽を得ることができるんです」

 口語的にすると読みやすいけれど、やり過ぎると軽くなる。硬い文章は飽きるから崩して不完全な日本語にする。こうした作業を本が出る直前まで繰り返す。

 中村さんは、社会の動きについて作家は言葉を発する責任があると考えている。今回の作品でも、

「右傾化がどんどん進んでいく今の時代に対して、文学的にしっかりと自分なりの抵抗を示したかった。政治的なことは口にしないほうが本当は楽。でも、みんなが言いたくても言えないこと、声になっていない思いを代わりに伝えるのも表現者の役割だと思います」

(仲宇佐ゆり)

週刊朝日  2018年11月2日号


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