中井美穂、好きだ。

N「あ、私も観てました! 逸見さんの!」

 どうもこの人は記憶がゴチャゴチャである。

私「それは『スーパータイム』ですよ。幸田シャーミンがやってた夕方のニュース!(笑)」

 なんかだんだん面白くなってきた。

N「……で、松坂の奥さんは誰かって話ですよね?」

 いや、別にそんな話ではない。あなたが『松坂世代』なんて言うからそうなったのだ。ついには我慢できなくなってスマホで調べようとするNさん。

私「調べちゃいますか? いーんですか?(ニヤリ)」

 我ながら意地悪だ。無視して調べるNさん。堪え性がない人だ。

N「……柴田倫世、元日テレ……」

 なんかピンときてない様子。

N「イチローの奥さんは福島弓子、元TBSか」

 同じ局じゃなかった。ごめんなさい。

N「で……今、調べて分かったんですが……」

 半笑いのNさん。

N「わたくし、今年40なので『松坂世代』ではありませんでした」

私「なんじゃそりゃ!?」

 自然に口から飛び出した、かなり純度の高い「なんじゃそりゃ」だった。

 落語会開演までの30分で、同い年の二人の距離はかなり近づいたようだ。「もう我々は『松坂世代』でいーんじゃないかな」ということで、なぁNさん。

週刊朝日  2018年10月26日号

著者プロフィールを見る
春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

春風亭一之輔の記事一覧はこちら