解決策は、二つ。一つは、表面上は先生に従い、買い食いは先生の見ていないところでする。先生も自分の中で矛盾を抱えていて、それがバレないように隠しているんだと思いますよ。だから「先生も大変だな、ある意味かわいそうだな」と、従うふりをしてあげる。下手なトラブルを避ける“面従腹背コース”とも言えます。

 もう一つは、おかしいと思うことを、おかしいとはっきり言うこと。でもそれを一人だけで言っても、何も変えられないでしょう。だから同じように思っている複数の生徒らで団結して、校則の見直しを学校に訴えたらどうでしょう。生徒には、国連の「子どもの権利条約」に基づく意見表明権があります。生徒会やホームルームなど公の場で議論することで、学校の中の“世論”を作り、あくまで生徒の代表意見として学校に働きかける。これはやってみる価値があると思いますよ。

 現政権の意向による道徳教育にも見られるように、学校では生徒を型にはめるルールがあまりに多い。だからこそ、違和感があるという自覚が、非常に大切です。「世の中とはこういうものだ」などと納得してしまってはいけない。「おかしいんじゃないか」という感覚は、生涯持ち続けてほしいのです。

週刊朝日  2018年9月28日号

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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