駅伝監督を解任された渡辺氏は、1993年から指導していた愛知・豊川工業高校の監督時代も体罰問題で懲戒処分を受け、退職した。しかし、同校を駅伝の強豪校にした手腕からか、一部の選手は引き続き指導を請い、保護者らは“嘆願”の署名活動まで展開していた。

『ブラック部活動』などの著書がある内田良・名古屋大学准教授が指摘する。

「体罰を支持するかのような事態でした。生徒や保護者が擁護すれば、罪の意識はなくなる。渡辺氏はますます自分が正しいことをしたと思い込んだのでしょう。たとえ全国大会で好成績をあげても、部活動は教育の一環ですから、暴力は絶対に容認しない強い姿勢が必要です。日体大は問題ある人物を迎え入れ、むしろキャリアアップさせた。そのため、また暴力が起きるという負の連鎖です」

 渡辺氏だけでなく、日体大の責任も厳しく問われるべきだろう。

「教育なんて二の次で、オリンピックをはじめ各種競技大会で勝ち、学校を宣伝してくれればそれでいいのです。学校のイメージが上がれば、学生も集まってくる。選手は金儲けのための商品なのです」(谷口氏)

 社会からのブーイングの声を受け止め、ノーモア・パワハラを遂げられるか。改善の道は険しいが、スポーツ指導のあり方を根底から見直す必要がある。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2018年9月28日号