人間並みの大きさだから、通信販売が主流だ。だが、ダッチワイフのころには、「大人のおもちゃ屋」にも置いてあった。入り口に「18歳未満の入店はお断りします」と注意書きがついている、ませた子どもが気になってしょうがない店である。

 庶民文化研究家の町田忍さん(68)によると、「大人のおもちゃ屋」という業態が登場したのは昭和40年代という。

 中でも人気を集めたのは「ん子」と呼ばれた民芸郷土人形である。先端におじさんの顔がついたこけしで、電気でブルブルと動く。要は電動バイブである。この男性型性具は電気のなかった江戸時代、「張り形」として大奥で人気を集めたという。性をおおらかに楽しむ文化は江戸時代に花開いたのかもしれない。

 以前、本欄でも書いたが、ビニールに覆われたエロ本、通称「ビニ本」やエロ漫画誌も「大人のおもちゃ屋」では人気商品だった。内容もあまり問われなかった。「とにかく女性の裸と、男と女のカラミが一定程度あれば良かった。でも悩みは、欧米並みのモデルが当時まだ少なかったこと。仮にいたとしても恥ずかしがって脱いでくれなかった」と、ある風俗ライターは打ち明ける。

 ここで、平成に入ってからの「大人のおもちゃ屋」について語ろう。長らく男性専用だったが、平成5(1993)年、東京の渋谷に「女性専用の大人のおもちゃの店」が開店する。店名「キュリウス」。バイブレーターが壁一面に並ぶ店内には女性1人か、カップルでないと入れなかったという。だが大繁盛。1年目に名古屋と大阪、2年目に広島と福岡に支店を出した。

 最近は「アダルトショップ」「大人のデパート」などと呼ばれるが、「大人のおもちゃ屋」と呼んだ方が、隠花植物のようにひっそり商売をしているような感じがするし、隠微なムードも漂う。昭和時代のネーミングはやはりセンスがある。

週刊朝日  2018年9月14日号