帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
認知症とアロマテラピー(※写真はイメージ)
認知症とアロマテラピー(※写真はイメージ)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「認知症とアロマテラピー」。

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【ポイント】
(1)アロマテラピーは認知症の周辺症状に効果的
(2)周辺症状だけでなく中核症状にも効果がある
(3)匂いの脳への刺激は認知症予防につながる

 アロマテラピーとは、植物の花、葉、果実などの芳香成分(精油=エッセンシャルオイル)を利用して、心身の不調の改善や健康増進などを図る自然療法のことです。

 精油の利用法としては(1)機器で空中に拡散して芳香浴をする(2)精油を混ぜた湯で入浴する(3)成分を鼻や口から直接吸い込む(4)希釈したものを体に塗ってマッサージする、などがあります。

 いずれにしろ、良い香りの中に身を置くことが、心身のリラックスや気分の高揚をもたらすことは想像できます。

 認知症では、物事を忘れてしまう記憶障害、時間や場所がわからなくなる見当識障害、いつもやっていたことができなくなる遂行機能障害などが起きます。こうした症状を中核症状といい、さらに、この症状から二次的に生まれる周辺症状(BPSD)があります。徘徊する、暴力的になる、抑うつ、無気力になる、妄想が生まれる、睡眠障害を生じるといったことです。

 この周辺症状は中核症状から引き起こされるものですから、中核症状への対応次第で、症状の軽減や解消が期待できます。

 アロマテラピーが認知症の周辺症状に効果的なのは以前から知られていました。精油は心身をリラックスさせますから、周辺症状を引き起こすストレスを緩和して興奮状態を沈静したり、睡眠障害を改善したりするのです。

 注目されるのは、アロマテラピーが周辺症状だけでなく中核症状にも効果があるという研究報告があることです。アルツハイマー病の患者さん77人に、28日間、芳香浴によってアロマテラピーを行ったところ、中核症状である見当識の部分で効果があらわれたというのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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