ひざや股関節といった、比較的大きな関節に対する人工関節手術の件数は減少しているが、手指や足趾(足の指)の関節の手術の件数はほとんど変わっていない。その背景を田中医師はこう解説する。

「関節リウマチは手指や足趾といった小さな関節から始まり、年月を経てひざや股関節も破壊していきます。薬物治療の進歩で、ひざなどの大きな関節にまで進む前に炎症を抑えられるようになったものの、手指や足趾の関節の変形などは早くから進んでしまい、手術の対象になるケースが多く残されていると思われます」

 ひざや股関節の動きの悪さは、歩行困難から日常生活に支障が出るため手術が必要な例が多かった。これに対して、手や足の動きの悪さは少しずつ進み、その間の“慣れ”でやりくりできてしまうことがあり、多くの患者が我慢していた。

 しかし、ひざや股関節にまでは症状が進まない人が増えたことから、その分、手や足の変形などに意識が向かいやすくなって手術に踏み切る人が出てきたのだ。

■薬剤で炎症を抑え足の指の関節を温存

 関節リウマチでの手指の手術では、筋肉と骨をつなぐ腱の手術が広く実施されている。腱が切れて、手指がぶらぶらしているなら、腱をつなぐ。人さし指から小指の4本が、その付け根から小指方向に曲がる「尺側偏位」には、靱帯や腱などを伸ばしたり縮めたりして再建する手術などがある。破壊や不安定さが進行した例には、よく使う角度で手指を固定する手術もある。

 そして、手指の関節の人工関節への置換術も実施されている。固定しても影響の少ない関節は固定し、動きを回復させたい関節を人工関節に置き換える。多くは手指の付け根の関節であり、指先から2番目の場合もある。

 田中医師は、最近の手指の手術について言う。

「痛みや変形で日常生活に支障が出ている人だけでなく、手は人目につきやすいため審美的な理由から手術を希望する患者さんも珍しくなくなってきました」

 こうした手指の手術同様、足趾の手術も必要とする患者は多い。田中医師の見方はこうだ。

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足裏にタコができる