病気そのものは抑えられても変形は残ります。とくに足の場合、歩くことで頻繁に使ううえ、女性がハイヒールで歩いたりするといっそう足の負担が増え、変形が進みやすくなります」

 ハイヒールで歩くことが多い女性によく起こるのは、足の親指が外側に大きく反ってしまう外反母趾。親指の付け根が脱臼し、重症化すると親指が人さし指の上に重なってしまう。関節リウマチでこの変形が起こった場合、足裏にタコ(胼胝)もできるのが特徴である。

 足の場合、足首用の人工関節はあっても、足趾用に開発されたものはまだない。このような外反母趾によく実施されているのは足趾の関節形成術である。

 かつて、関節の炎症を十分に抑えきれなかったころは、炎症を抑えるために足趾の関節ごと切除することで、変形を直していた。しかし、2010年ごろから、関節を温存し、骨の一部を切除して変形を直す「中足骨短縮骨切り術」という手術法が普及してきた。

「関節を温存しても、薬物療法で炎症を抑えられるようになったからです。やはり関節を切除すると足に力が入らず歩きづらいため、関節を残せるのは大きな意味があります」(同)

 このように自分の関節を残すことと、人工関節が使える部位に対しては、人工関節の長寿命化で30~40歳代の人でも関節破壊が進んでいれば人工関節が使えるようになったことが、近年の関節リウマチの手術の特徴である。そして、田中医師は外科的治療が必要な場合でも薬物療法は重要として次のように強調する。

「かつて、炎症を抑えられないまま手術をおこなうと、多量の出血の中での手術になり、医師には難手術で、患者さんのからだへの負担も大きくなりがちでした。それが薬で炎症を抑えることにより出血が減り、手術の難易度は下がり、患者さんのからだにもやさしい手術になりました」

 実際に、薬物療法が効いた人ほど、ひざの人工関節置換術後のQOL(生活の質)が高かったという報告も出ている。手や足に関節リウマチの症状を抱える患者に、田中医師は次のように呼びかける。

「動かしづらさや外見を我慢している時代ではありません。早めに決めれば、その分、治療の選択肢も多く、よりよい改善が期待できます。まず、整形外科医に相談してみてください」

◯東京大学病院整形外科教授
田中栄 医師

(文/近藤昭彦)

※週刊朝日8月31日号