帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
認知症への音楽療法(※写真はイメージ)
認知症への音楽療法(※写真はイメージ)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「認知症への音楽療法」。

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【ポイント】
(1)認知症への音楽療法は効果が出ている
(2)音楽には生理的、心理的、社会的働きがある
(3)音楽による心のときめきが認知症予防に

 今回は認知症への音楽療法について取り上げたいと思います。認知症の患者さんに様々な音楽療法が行われ、効果が出ています。これはすでに認知症になった方に対しての療法なのですが、音楽が認知症の症状をやわらげるのであれば、認知症予防についても力を発揮するに違いありません。

 と言っても、実は私は自他共に認める音痴で、音楽は苦手分野なのです。そこで、私が日頃、敬愛している音楽療法士に話を聞いてきました。

 音楽療法の効果は様々です。(1)音楽と共に体を動かすことによって、身体能力を維持向上させる(2)音楽を通じてお互いのコミュニケーション力を高める(3)心理的に落ち込んでいる人を音楽で回復させる、といったように多様なアプローチがあります。

 日本音楽療法学会の音楽療法の定義はこうです。

「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」

 私は音痴ですが、「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働き」というのはよくわかります。音楽にはそういう力があるからこそ、ヒトが誕生して以来、世界中の人たちが音楽を愛し続けてきたのでしょう。

 認知機能が低下すると、日常生活での失敗が増え、自信を失ったり、自尊心を低下させたりします。

 自分の言うことが周囲にわかってもらえず、周囲が言っていることがわからなくなって不安が高まり、抑うつ状態に陥ります。人とのコミュニケーションがなくなり、孤立して閉じこもってしまいがちです。そういう人たちの心を開くのに、音楽は効果的だというのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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