塞栓源不明の脳塞栓症は、からだのどこかにできた血栓が飛んで脳梗塞を起こすが、どこから来たものか通常の検査では見つけられないものを指す。この場合、脳梗塞の治療とともに、どこでできた血栓か、原因の探索が非常に大切になる。

 ここには、「心原性脳塞栓症が疑われるが、検査時に心房細動がとらえられない脳梗塞」も含まれる。発作が7日以内におさまる「発作性心房細動」では、検査時に発作が起こらないことも多い。こうしたケースでは、心房細動の発作をとらえ、診断、治療をおこなうことが不可欠になる。原因疾患である心房細動を治療しないと、高い確率で脳梗塞が再発してしまうからだ。

 その際、必要になるのが、脳梗塞を診る脳神経外科・内科、神経内科などの脳卒中医と、循環器内科医の連携だ。東邦大学医療センター大森病院循環器内科主任教授の池田隆徳医師は次のように話す。

「心原性脳塞栓症については20年ほど前から知られていましたが、脳卒中医は脳梗塞を、循環器内科医は心房細動を診るというように、以前は診療科の連携がそれほど密ではありませんでした。その後、積極的な連携が重要視され、2013年に日本心血管脳卒中学会が設立されました。活動はようやく本格化してきたところです」

 脳梗塞を起こすと、多くはまず脳卒中センターなどに運ばれ、脳卒中医が治療に当たる。そこでは脳血管や頸動脈、心電図などの検査が通常おこなわれる。塞栓性脳梗塞の可能性があるときは、心エコー(心臓超音波検査)や長時間心電図モニタ、血栓ができやすいかどうかをみるDダイマーや心臓の状態をみるBNPの値を調べる血液検査などもおこなう。その結果、心房細動が疑われた場合、循環器内科と連携して、診断・治療を進めることになる。

 検査時に心房細動の発作をキャッチして、すぐに抗凝固薬での治療にとりかかれれば問題ないが、発作性心房細動の場合、発作をとらえるために、24時間ホルター心電図などで心臓モニタリングがおこなわれる。それでも退院時までにキャッチできない場合は、植え込み型心臓モニタを用いることがある。

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心房細動と診断されても服薬せずに脳梗塞発症