生涯において心房細動患者の3人に1人の割合で起こると考えられている(※写真はイメージ)
生涯において心房細動患者の3人に1人の割合で起こると考えられている(※写真はイメージ)

 心臓でできた血のかたまりが脳血管につまって起きる脳梗塞は、原因となる心房細動を探し出して再発を防ぐ必要がある。そのため、循環器内科医と脳卒中医との連携を強化して治療に当たる、一種のチーム医療が推進され始めた。

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 不整脈の一つである心房細動があると、脳梗塞を引き起こすリスクが高くなる。では、どのようにして心房細動から脳梗塞が起こるのだろうか。

 心房細動では、左心房の肺静脈開口部という部分に異常な電気信号が発生し、周囲の心筋が震えてしまう。そのため血流がよどみがちになり、血栓(血のかたまり)ができやすくなる。できた血栓が血流に乗って左心房→左心室→大動脈→脳動脈と流れていき、脳血管をつまらせてしまう。これが、心房細動が原因の脳梗塞、「心原性脳塞栓症」だ。必ずしも脳梗塞を発症するわけではないが、生涯において心房細動患者の3人に1人の割合で起こると考えられている。

 心房細動でできた血栓は大きいことが多く、脳血管でつまると脳の広範囲にダメージを与えてしまう。たとえ命が助かっても深刻な後遺症が残りやすい。日本医科大学病院神経・脳血管内科部長・大学院教授の木村和美医師は次のように話す。

「これまでに手掛けた症例を調べたところ、心房細動のない人の脳梗塞後の5年生存率は70%を超えていますが、心房細動がある人では50%です」

 心房細動は自覚症状のない無症候性心房細動が多いことから、脳梗塞発症のあとで、心房細動の存在に気づくことも少なくない。

「当院でのデータでは、脳梗塞で心房細動が見つかるケースが、約半数にのぼります」(木村医師)

 心原性脳塞栓症は脳梗塞の約4分の1を占め、頻度は高い。そのほかに、動脈硬化や高血圧が原因で起こるアテローム血栓性脳梗塞、細い血管がつまるラクナ梗塞、塞栓源不明の脳塞栓症が占める。

■診療科連携で心房細動をキャッチ

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発作性心房細動は検査時に発作が起こらないことも