■心房細動の診断が再発防止に

 植え込み型心臓モニタは16年に潜因性脳梗塞(=塞栓源不明の脳塞栓症)の診断について保険適用になった。ボールペンのキャップくらいの大きさのモニタを左胸の皮下に挿入、心電図データが専用通信機に蓄積される。さらに心房細動が起きたら、医師のもとにメールで知らせが届くように設定することもできる。

「心房細動と診断できないと、脳梗塞を防ぐための抗凝固薬の処方を始められず、患者さんは脳梗塞再発のリスクが高いままになってしまいます。心房細動を早くキャッチすることがなによりも大切です」(池田医師)

 前出の木村医師も次のように話す。

「抗凝固薬を服用できれば、心原性脳塞栓症は5分の1に減らすことができます。カテーテルアブレーションによる治療に関してはまだデータが出ていませんが、抗凝固薬と同等かそれ以上の結果が出るでしょう。診療科連携で治療を進めることで、再発率も下げられると考えています」

 問題なのは、心房細動と診断されていても、服薬などの治療を受けずにいて脳梗塞を起こしたケースが多いことだ。日本医科大学病院でのデータでは、心原性脳塞栓症患者のうち、すでに抗凝固薬を飲んでいた人が約30%、心房細動の発症を知らなかった人約30%、発症を知っていても治療を受けていなかった人約30%だったという。

 心原性脳塞栓症を防ぐには、なによりもまず心房細動の有無を知ることだ。それには、半年~1年に一度程度の心電図検査のほかに、毎日の脈拍チェックがすすめられる。

「とくに60代以降で生活習慣病のある人は、血圧を測るように脈拍チェックを習慣づけましょう」(池田医師)

 そして、症状がなくても脈拍に異常を見つけたら、循環器内科を受診することが肝要だ。

◯東邦大学医療センター大森病院循環器内科主任教授
池田隆徳医師

◯日本医科大学病院神経・脳血管内科部長大学院教授
木村和美医師

(文/別所文)

週刊朝日 8月3日号