慢性腎臓病(CKD)は進行すると腎不全になり、透析や移植などが必要になる。透析は通院でおこなうものが一般的だが、近年、患者の生活の質を考えて自宅でできる新たな透析治療や、腎移植の普及が期待されている。
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末期腎不全を放置しておくと尿毒症が悪化し、昏睡から死に至る。このため腎臓の代わりとなる透析治療や腎移植などの「腎代替療法」が必要になる。
透析治療には定期的に通院しておこなう「血液透析」と、在宅で患者自身がおこなう「腹膜透析」の2種類がある。日本ではほとんどが血液透析で、腹膜透析は約3%と少ない。日本赤十字社医療センター腎臓内科部長の石橋由孝医師は言う。
「血液透析は1970年前後から実施されている歴史ある治療。通院できるクリニックもたくさんあります。これに対し、腹膜透析が登場したのは80年代で、実施できる施設がまだ少なく、患者さんに知られていないことが大きいでしょう」
■血液透析と腹膜の併用が保険適用に
医療側の問題としては、腹膜透析に使用する透析液による重篤な合併症「被嚢性腹膜硬化症」が90年代に相次いで報告されたことがある。
「しかし、新しい透析液と診療指針が見直され、2001年以降はリスクが軽減し、安全に施行できるようになりました。また、血液透析との比較で、腹膜透析のほうが腎機能を維持でき、尿を自分で出せる期間が長いであろうことも利点です。こうした背景から多くの腎臓専門医は末期腎不全の患者さんが透析治療を導入する場合、適応があれば腹膜透析を検討してほしいと考えています」(石橋医師)
透析とは濾過や排せつ機能が低下、または失われた腎臓の代わりに血液から老廃物や余分な水分を取り除く治療だ。
血液透析では患者の手首近くの太い血管(動脈と静脈をつなぐ手術によって作製)から1分間あたり200ミリリットルの血液を取り出し、ダイアライザー(透析器)に流す。
ダイアライザーは細い管状の透析膜(直径0.2ミリ)が約1万本束ねられた構造で、この中の小さな穴を老廃物や水分、塩分が通過。浄化された血液に透析液から、からだに必要なカルシウムなどが添加され、これが体内に戻される。標準的には1日おきに通院し、1回あたり3~5時間かけておこなわれる。
一方、腹膜透析は腹膜の毛細血管を介して血液の浄化をおこなう。