「座禅や気功、ヨガの基本となる丹田呼吸法をベースにした腹式呼吸がよいです。セロトニン神経が活性化されると、安静時に出る脳波のアルファ波が出ます。すっきりとした、とても幸せな気分になれます」

 以上のように、身近な日々の暮らしに、幸せを感じるヒントは数多くある。

 人生100年時代と言われ、年をとっても長く幸せを感じられることがますます大事になってきた。自らの悩みや人間関係のトラブルでうつ病になれば、家に閉じこもってしまう。食欲を失い、運動もしなくなり、筋力が衰える。要介護の一歩手前の「フレイル(虚弱)」に陥りやすくなる。

 幸せを感じることは、心の健康のバロメーター。前出の伊藤教授は、健康・財産・地位・名誉など幸せの要素をボトムアップ式で積み上げようとしても幸せには到達しない、と説く。著書では、発想転換を迫るこんな指摘をしている。

〈「幸福」を得るには、「トップダウン方式」でやるしかないのです。(中略)健康でいる、お金を儲ける、仕事をうまくやる、愛しい伴侶を得るといったことを積み重ねて「幸せになる」のではありません。逆なのです。幸福になれれば、健康になる、お金が儲かる、仕事がうまくいく、愛しい人が見つかる、のです。これが「幸福」のトップダウン方式です〉

 幸せになるための生活習慣とトレーニング。できることから、一つずつ始めてみませんか。(村田くみ)

■100年人生をたおやかに、「幸せ寿命」を延ばす10のポイント
【共感脳】
・頑固さは老いの証し、相手を認める癖をつけ、積極的にほめる
・地域や趣味の集まりで人と交わる、幸せは人と人の「あいだ」にある
・他者やペットとの触れ合いで、抱擁ホルモン「オキシトシン」を分泌

【ときめき脳】
・憧れの異性やかわいい孫など、一緒に過ごしたい心躍る相手を増やす
・学び直しや趣味への新たな挑戦で脳は喜ぶ、生活にハリが出る
・おしゃれや身だしなみに気を使い、周りから見られている意識を

【すっきり脳】
・朝起きたら太陽の光を浴び、神経伝達物質「セロトニン」を分泌させる習慣を
・ウォーキングなどリズミカルな運動を、ガムやスルメを噛んで脳に刺激
・吐く息に意識を集中させる腹式呼吸で緊張をほぐし、脳のアルファ波を出す
・嫌な経験や記憶をいつまでもひきずらない、「忘却の天才」をめざせ
(取材をもとに編集部作成)

週刊朝日 2018年6月1日号