従来は往復はがきで変更点がなければ「変更なし」にチェックし送り返すだけで良かった。ところが昨年から、A3用紙に一から書く形式に突然変わったのだ。機構は「非常にわかりにくいものになってしまった」と今になって認めている。

「どう書いていいのかわからない」「毎年の申告書だとは気づかなかった」

 こうした高齢者の戸惑う声が機構の相談窓口に殺到した。当初は昨年9月29日を提出期限にしていたが、12月11日まで延長。それでも期限までに出せたのは666万人しかおらず、約130万人が「過少支給」されることになった。

 機構のこの問題への対応は、「不誠実」と批判されても仕方のないものだ。今年2月13日にホームページに「平成30年2月の老齢年金定時支払における源泉徴収税額について」との文書を出したが、問題の規模や深刻さは伝わらない内容だった。この時点では会見もしておらず、問題は表面化しなかった。

 機構の水島藤一郎理事長は、2月15日の年金支給日から1カ月以上過ぎた、3月20日に初めて会見。対応の遅さを指摘されると「ホームページでは状況を開示してきたが、このような形で説明しなかったことは反省すべきだと考えている」と述べた。

 さらに驚くべきことも明らかになった。機構が扶養親族等申告書のデータ入力を委託した業者は、契約に違反し、中国の関連企業に作業を再委託していた。この業者では入力ミスや漏れが続出し、期限内に提出された申告書が放置されるケースもあった。機構は業者の納品データをチェックしておらず、管理体制が不十分だった。

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