腹囲測定の様子(c)朝日新聞社
腹囲測定の様子(c)朝日新聞社
糖尿病が強く疑われる人と可能性を否定できない人の比率(週刊朝日 2018年5月25日号より)
糖尿病が強く疑われる人と可能性を否定できない人の比率(週刊朝日 2018年5月25日号より)
トリプルリスク解消法の基本と応用(週刊朝日 2018年5月25日号より)
トリプルリスク解消法の基本と応用(週刊朝日 2018年5月25日号より)

 高血圧、高血糖、脂質異常(高血中脂質)は、生活習慣病を生む大きな要因。これらの危険性「トリプルリスク」に早く気づけば、健康寿命を長く保てる。今の食生活や運動習慣を見直す必要はないか。できることから始めたい。

【図】トリプルリスク解消法はこちら

 健康診断でメタボリックシンドロームに該当しないと判定され、体調は悪くなく、自覚症状もない。しかし、この状態でも実は糖尿病の初期段階の恐れがある。

 こんな指摘をするのは、メタボの危険性について長年警鐘を鳴らす岡部正医師。東京・銀座の岡部クリニックで、糖尿病や脂質異常症など生活習慣病の人向けのメタボ外来を設けている。

「メタボを体形の問題ととらえるのは危険で、正しく理解されていないことを懸念しています。メタボは内臓脂肪の蓄積が原因となり、高血圧、高血糖、高血中脂質が重なった状態です。三つは根っこでつながっており、一つが悪くなると他も悪くなる可能性があります。これを『トリプルリスク』といいます。三つとも初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、いずれ動脈硬化が進行するリスクが高いのです」

 根っこの共通の要因は、インスリンの働きが悪くなること。血液中のブドウ糖を取り込んでエネルギーに変える力が弱くなり、血糖値が上がる。ナトリウムを排出する腎臓の機能が低下し、ナトリウムの再吸収が進んで血圧が上がる。肝臓では中性脂肪が盛んに合成され、血中脂質が増える。そんな悪循環が生まれる。

 メタボが悪化すれば、動脈硬化を引き起こしやすくなる。動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳卒中などにつながる。体の異変に早く気づくため、2008年に始まったのがメタボ健診だ。

 健診開始から10年になるが、メタボに端を発する生活習慣病は、依然として国民病ともいうべき広がりをみせている。厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病の人とその予備群は各約1千万人。高齢者ほど糖尿病の人が多い。高血圧は1011万人、高脂血症は206万人いる(厚労省「患者調査」)。

 岡部医師らは「トリプルリスクを考える会」を2月につくり、高血圧、高血糖、高血中脂質を同時にケアする啓蒙活動を始めた。予防策をこうアドバイスする。

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