あと4、5年で、680万人いると言われる団塊の世代が、後期高齢者である75歳に突入し始める。今、その世代にとって関心が高いのが、「老い」と「孤独」なんですね。その世代がキーワードとして時代を動かしている。

 孤独という言葉は、誤解されがちだけど、誰ともかかわらない寂しい状態のことではありません。孤独と孤立は違うんです。NPOに参加する、みんなでカラオケやバスツアーにも行く。いろんな人と仲良くしながらも、自分をなくさない。「和して同ぜず」「Together and Alone」の精神です。コーラスだって、それぞれが自分のパートをしっかり歌わないと、全体がきれいな歌声にはなりません。

 そして、老いと孤独のあとに何が来るかと考えると、「死」と「死後」です。死や死後の世界をどう見つめていくか、どうやって平静に死を迎えるかということが、4、5年後には大きな話題になってくるでしょう。

 50代、60代の人たちは、まだまだ先が長い。しかし、これからの人生を幸せに生きるためには、老いや死ということを真剣に考えたほうがいい。

 今話題になっている『君たちはどう生きるか』は、1930年代に吉野源三郎さんが、大人の立場で軍国主義の高まりに反発しながら、若い人たちに生き方を説いた。私たちにはそんな余裕はありません。「俺たちはどう生きるか」が問題でしょう。そのあとは「俺たちはどう死ぬか」です。

 僕もいずれ死ぬわけですが、死ぬことは、けっしていやではありません。どう迎えればいいか、そして死んだらどうなるのか。そういうことをずっと考え続けています。僕は、少年時代からどう死ぬかを考えてきた。いわば、死について考えるベテランですからね(笑)。

――自身も「老い」を感じ、人生のゴールが見えてくる時期に差し掛かっている。それでも、いわゆる健康的な生活とはほど遠い毎日だ。

 朝8時に寝て、午後3時に起きるような生活を50年ぐらい続けています。1日にせいぜい1千歩ぐらいしか歩かないし、食事も不規則で、病院もほとんど行ったことがない。去年一度行きましたが、やっぱりあんなところは行くもんじゃないなと思いましたね。

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