全国で増え続けてきたマンション。快適なくらしの場となる一方で、新たな課題も増えている(写真は本文と直接関係ありません)(c)朝日新聞社
全国で増え続けてきたマンション。快適なくらしの場となる一方で、新たな課題も増えている(写真は本文と直接関係ありません)(c)朝日新聞社
現場従業員の採用が厳しくなっている理由(複数回答)(週刊朝日 2018年4月27日号より)
現場従業員の採用が厳しくなっている理由(複数回答)(週刊朝日 2018年4月27日号より)
マンション管理員の過不足感(直近1年間)(週刊朝日 2018年4月27日号より)
マンション管理員の過不足感(直近1年間)(週刊朝日 2018年4月27日号より)
増え続ける分譲マンション(週刊朝日 2018年4月27日号より)
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管理の仕事はシニアが支え(現場従業員の年齢構成)(週刊朝日 2018年4月27日号より)
管理の仕事はシニアが支え(現場従業員の年齢構成)(週刊朝日 2018年4月27日号より)

 都市部で新築ブームが続く一方で、中古物件の老朽化や入居者の高齢化も進むマンション。住人の死去や転居で空室が増え、管理費徴収もままならず、最近の人手不足で管理員のなり手がいない。あなたの自宅が、そんな“限界マンション”になれば、ゴミ屋敷やスラム化への道が待っている。

【調査結果】給与、勤務時間…現場従業員の雇用の実態は?

「マンションは施設の老朽化と住民の高齢化という二つの『老い』に直面していますが、もう一つ進む老いがあります。清掃や点検を担う管理員の高齢化です」

 こう話すのは、不動産コンサルティング会社「さくら事務所」の土屋輝之さん。マンション管理のコンサルタントとして、住民らの課題に向き合ってきた。

「ここ数年は毎年10万戸前後が新規供給され、マンション数は増えています。一方で、常駐・通勤の管理員の担い手が足りません。管理会社は人材確保のため、定年を延長したり、採用年齢を引き上げたりしています。その結果、管理員が高齢化しているのです」

 マンション管理業協会が3月にまとめた調査によると、会員の管理会社の過半数が管理員採用が難しいと答えた。特に、勤務時間週30時間未満の通勤管理員は、6割超が「大いに不足」「やや不足」と答えており、不足感が強かった。

 協会の関西支部長、鈴木清・阪急阪神ハウジングサポート社長は「当協会が協力している公益社団法人大阪府シルバー人材センター協議会の管理員技能講習は、50人の枠に200人以上の応募が普通でした。それなのに、ここ数年は応募段階で定員割れの状態。実際に受講する人は40人を大きく割ることもある」と嘆く。

 さくら事務所の土屋さんも、こう指摘する。

「管理会社は業績アップのために新規受注が必要ですが、管理員を確保できずに受注を見送らざるを得ない例もあります。また、欠員となった場合などに後任者が決まらず、毎日違う代行管理員でしのぐケースもみられます」

 なぜ、管理員はそれほどまでに足りないのか。土屋さんが続ける。

「数年前まで、マンション管理員は定年退職した人や早期退職した人の第二のキャリアとして人気でした。しかし、この世代の人たちが管理員の求職市場に出てこなくなったことが、一因として考えられます」

 きっかけの一つが、2013年に施行された改正高年齢者雇用安定法だ。希望者全員を65歳まで雇うことが企業に義務付けられた。このため、管理員の応募が多かった60代前半の求職者が減っているという。

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