介護の苦労は外からではわかりにくいですし、明確な判断基準もありません。そのため介護の寄与分を認めてほしいと主張しても、もめてしまうことが多い。法改正で新たに権利を主張できるようになれば、もともとの相続人が大きな不満を抱え込むことになりかねません」(相続支援業「夢相続」の曽根恵子代表)

■遺留分巡り争い 現金請求可能に

 遺言がある場合には、それに基づいて資産を分ける。ただし、法定相続人には最低限の権利「遺留分」が保障されている。遺言で遺留分未満しかもらえない場合は、足りない分の権利を主張することができる。これが争いの種となり、もめることがよくある。

 以下のケースを考えてみよう。遺産は自宅3千万円と預貯金2千万円で、相続人は妻と長男と次男の3人。遺言では「自宅を妻に、預貯金のうち長男に1500万円を、次男に500万円をそれぞれ分けてほしい」と書かれていた。

 遺留分は法定相続分の半分になるため、妻は1250万円、長男と次男は625万円ずつとなる。次男は遺留分に125万円足りず、この分を妻や長男に求めると争いに発展しやすい。

 いまは遺留分を取り戻すための「遺留分減殺請求」を申し立てると、すべての遺産が相続人全員による共有状態になる。遺産の配分はその後の協議に委ねられてしまう。調停や訴訟になれば紛争は長引く。

 改正では「遺留分侵害額請求」という申し立てが認められるようになる。遺留分に満たない分を現金で請求するものだ。

「遺留分減殺請求を申し立てる相続人は、金銭的な解決を望んでいるケースが多い。改正によって初めからお金で解決できる仕組みになれば、遺留分を巡る紛争もよりスムーズに解決できるようになる」(作花氏)

 家族が遺産を巡って争う「争続」を避けるには、遺言を用意しておくことが有効だ。

 身近なのが被相続人本人が書く「自筆証書遺言」。費用がかからず遺言書を残せるが、法律で定められた形式を間違えると無効になってしまうことも。これまでは全て手書きするルールだったが、財産目録の一部をパソコンなどで作成できるようになる。資産の多い人は表計算ソフトなどを使って目録を整理し、印刷すればよい。

「財産目録だけでもパソコンが認められれば、かなり労力を減らすことにつながる。間違えた場合の書き換えの負担も少なくなるでしょう」(佐藤氏)

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