■介護の貢献考慮 相続人以外も対象

 相続人以外の親族でも、介護などの貢献分が認められるようになることもポイントだ。対象は、いとこの孫ら6親等以内の血族と、おいやめいら3親等以内の配偶者だ。義父を長年介護してきた「息子の妻」らが、主な対象になりそうだ。

 介護の実績などの証拠をそろえて、貢献分に応じた金額の請求を相続人全員に伝える。相続人全員が認めてくれない場合、家庭裁判所での遺産分割調停や審判に移る。

 請求できる金額は介護の期間や内容などケース・バイ・ケースなので、目安は示しにくい。長年介護していても、数百万円程度しか認められない可能性もある。

 これまでも故人の財産の増加や維持に特別に貢献した人については、遺産の取り分を増やす「寄与制度」はあった。しかし、対象は相続人に限られ、介護などをしても認められにくい面があった。相続問題に携わる作花知志弁護士は改正案を評価する。

「裁判所は『子どもが親の面倒を見るのは当たり前』というスタンスで、通常程度の介護は『みんながするもの』として特別な貢献分は認められにくかった。今回の改正は、こうした『認められにくい』点を補う意味があるのではないでしょうか」

 この改正についても注意点はある。長男と妻と、母親が同居していたケースを想定しよう。母親が亡くなると相続人は長男のほか、姉と弟の計3人だとする。故人は自宅2千万円と現預金1千万円を残していた。長男夫婦は亡くなるまで母親の面倒を見てきたが遺言書はなく、話し合うことになった。

 長男は会社に勤め、日中の介護は妻に任せきりだった。妻の介護の大変さを実際に見てきたし、自身も金銭的な負担をしてきた。妻の苦労をねぎらうためにも、「長男夫婦で合計5割、姉と弟で合計5割」が妥当だと思っていた。姉や弟も、介護の苦労をわかってくれると考えていた。

 しかし、いざフタを開けてみると、「妻は除いて3等分でいいわね」という姉の主張が通った。長男は住んでいる自宅を相続するために、自身の相続分1千万円を差し引いた1千万円分の現金を用意する必要に迫られた。

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