公証役場では公正証書遺言のパンフレットなどを用意している
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公証役場では公証人による無料相談も受け付けている
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相続制度見直し案の主なポイント(週刊朝日 2018年4月20日号より)
相続制度見直し案の主なポイント(週刊朝日 2018年4月20日号より)

 相続の仕組みが約40年ぶりに大きく見直される。亡くなった人の配偶者が自宅に住み続けることのできる「居住権」が創設される。ほかにも相続人が葬儀費や生活費などを引き出しやすくなるなど、変更点は多い。相続はどう変わり、どんなことができるようになるのか。ポイントと活用法をまとめた。

【図】相続制度見直し案の主なポイント

■不動産贈与便利に仮払い制度も新設

 結婚期間が20年以上の夫婦であれば、自宅を生前贈与すると、それは遺産分割の対象から外されるようになる。

 居住権の場合と同じように、自宅の評価額が大きく現金が少ないなら、あらかじめ妻の名義にしておくことを検討しよう。夫が死んだ後に自宅の所有権を巡ってトラブルが想定されそうなら、この仕組みを使えば事前に回避できる。

 相続人で協議して遺産の配分を決める「遺産分割」が終わる前でも、故人の預貯金を金融機関から引き出しやすくする「仮払い制度」も新設される。被相続人が亡くなったことを伝えると、金融機関は口座を凍結する。葬儀代や生活費などを引き出そうとしても、相続人全員が合意しなければ、引き出せなくなってしまう。このため、金融機関に亡くなったことをしばらく伝えない人も少なくなかった。

 法改正により、条件を満たしていれば相続人全員の合意がなくても、相続人1人当たり「預金額の3分の1×法定相続分」までなら引き出せる。もちろん、引き出したお金は相続財産から差し引かれる。相続に詳しい佐藤和基税理士は、葬儀や相続手続きなどには費用がかかるとして、この制度の活用を呼びかける。

「相続に伴い不動産を処分しようと思ったら、規模によっては数十万円程度かかる測量費用が発生することもある。相続人同士の関係が円満なら、先に自腹で払っておいて他の相続人と協議して精算できる。でもそうでないなら、喪主を務めたり手続きを任されたりした相続人が、当面負担しなければいけない。仮払い制度を使えば、そうした心配はなくなります」

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