■用意すべき遺言 法務局で保管も

 自筆証書遺言を全国の法務局で保管する制度も新たにできる。保管しているかどうかオンラインで検索でき、紛失や改ざんの恐れもない。家庭裁判所で内容を確認する「検認」の手続きも不要になる。

「遺言はそもそも、法定相続分と異なる資産の分け方を書くものですから、相続人にとって不満が生じやすい。にもかかわらず、実はこれまで自筆証書遺言が本当に本人の意思を反映したものなのかを証明する手段があまりありませんでした。新しい制度ができればそうした課題をカバーできます」(作花氏)

 使い勝手が良くなる自筆証書遺言だが、相続の専門家がすすめるのは「公正証書遺言」だ。裁判官や検察官の経験者ら、法律実務に詳しい公証人が作成してくれる。検認の手続きは不要で、オンラインの検索システムもすでに稼働している。日本公証人連合会の向井壯・広報委員長はこう呼びかける。

「公証人が作成する遺言は法律的に不備がなく確実です。公証役場は全国にあり、無料相談も受け付けています。遺言について不安があれば、近くの公証役場に相談してみてください」

 今回の改正によって改善される部分は大きいが、トラブルの多くは遺族間のコミュニケーション不足によって生じる。相続をどう乗り切るか。生前から家族同士でよく話し合っておく必要がある。

 相続税をどう納めるかも重要な点だ。申告・納付期限まで亡くなってから10カ月しかない。わからないことがあれば税務署に相談できる。亡くなった人が住んでいた場所を所轄する税務署に相談するのが原則だが、相続人が遠くに住んでいる場合は最寄りの税務署でも受け付けている。税務署は確定申告などで混んでいることもあるので、電話で予約してから行くとスムーズだ。国税庁は「10カ月は意外と短い。早めに準備してほしい」としている。

 相続はいつやってくるかわからない。法改正のポイントを押さえて、普段から備えておこう。(本誌取材班)

週刊朝日 2018年4月20日号より抜粋