──美樹役が聖子さんに決まったときの心境は?

「エリックの思考というか、日本との合作のキャスティングを彼はこんなふうに展開したという点にすごく興味を持ちました。すごい配置だな、と思いました。さっきも言ったように、エリックは日本ではあまり知名度はないのですが、聖子さんはエリックの存在や才能を誰よりも理解していて、聞いた話によると、聖子さんのほうからエリックに出演したいというラブコールを送ったそうです。エリックも聖子さんの大ファンで、ぜひ聖子さんに演じてもらいたいということで出演が決まったと聞いています」

──モデルから始め、後に本格的に演技に転向したそうですが、最もやりたいことは何ですか?

「前から映画を作る勉強はしていたんです。シュタイナー教育の学校に通っていて、先輩にファンタジー作家になった人が多く、そんな環境で幼少期を過ごし、また父が映像制作の畑にいたので、見学にもよく行っていて、手作りで物を作るという職業にずっとあこがれていたんです。黒沢清さんが講師をやっている映画美学校の願書まで書いたんですが、父に机の前で勉強するよりは現場に出たほうが早いと言われました。それで役者になったんです。なので、もともとは映画を作る側になりたかったんです」

──映画を作りたいと思うようになったのは学生のときだったのですか?

「そうですね。いろんな外国の映画も好きですし、小津(安二郎)、成瀬(巳喜男)、鈴木清順さんなど日本にもすごい才能をもった監督さんが多くいたと思います。日本映画に影響を受けたヌーヴェルヴァーグの監督などにも興味があります。彼らは北斎に影響を受けたゴッホに近いのかな、と思って。それらの映画のルーツを探りながら、現代だったら何が生まれるんだろうということに興味があります。友人でもある園子温さん、河瀬直美さん、三池崇史さんだったり、世界の舞台で活躍し、映画表現している人に共感します。日本では、世界に届く人と、そうでない人が明確に分かれている。日本の興行成績に左右されない全く別のところで、世界に届く映画が作りたいという妄想はずっとありました」

──最近、特に注目している監督は?

「カナダのグザヴィエ・ドランですね。僕より若いですけど、ちょうど1年前にパリで彼に会い、その前に日本でニコラス・ウィンディング・レフンに会い、その直後にドゥニ・ヴィルヌーヴに会ったんです。

 この3人は僕にとってセンセーショナルな人たちです。彼らは自分の欠点や恥部などから創作しているんじゃないかと思います。テーマ性がすごく良い。とても意味のある出会いだと思いますし、彼らに負けない作品を作っていきたいと思います」

──自分でカメラを回したりもするんですか?

「回しています。他に配給会社を探したり、劇場を探したり、移動映画館もやっています。監督以外にプロデュースもやり、映画をお客さんに届ける作業やイレギュラーな活動も、今後続けてやっていきたいと思っています」

(取材・文/高野裕子)

週刊朝日 週刊朝日 2018年4月13日号