竹中:選びたくないんですよ。脚本を読んで選ぶとか、何を偉そうにと思っちゃうんです。「つまんねえ仕事でもやれよ」って。自主映画でもなんでも、呼ばれたら行きますよ。
林:それはご自分に自信があるから?
竹中:いや、自信なんてものはないです。いつも不安だし、初めての現場に行く前の晩は、緊張して全く寝れないし。
林:たとえば学生さんから、「ちょっと出ていただけませんか」と言われたりしたら?
竹中:ありましたよ。学生が映画を撮るというので、「ああ、いいよ」って。
林:ノーギャラで?
竹中:もちろん。「こんにちは」と言ってドア開けて入ったら、みんな座ったまま「あ、ども」みたいな感じで、「そこで適当に踊ってもらいたいんですけど」って言われて。「あ、わかりました。どれに着替えたら……」「そこに置いてあるんで」「どこで着替えます?」「そこで」「はい」と言って、みんなの前でパンツ一丁になってタイツに着替えて踊りましたよ。
林:それはちょっと失礼じゃないですか。大先輩、しかもこんなすごい俳優さんに対して。いつの話ですか。
竹中:一昨年かな。さすがにちょっと落ち込みましたけど、これも勉強だと思って。
林 何が勉強ですか。彼らもいずれ社会に出て仕事をするわけですから、そういうのはちゃんと教えてあげなくちゃ。
竹中:でも、今は勝手に周りからベテラン扱いされちゃうから、それぐらいのことがあってもいいのかな。まだ劇団の研究生でエキストラをやったとき、「おまえの顔なんかいらねえんだよ」って怒鳴られてましたからね。それで僕が笑いでデビューしたとき、その人にポンと肩をたたかれて「お前は出てくると思ったよ」なんて言われちゃって(笑)。
林:うわーっ、イヤなやつ。
竹中:「いや、1年で消えますよ」とすぐに言いました。でもなんとかもっちゃいましたね。60歳過ぎまで役者を続けるなんて絶対無理だと思ってました。
(構成/本誌・野村美絵)
※週刊朝日 2018年4月6日号より抜粋