投手陣は柿木と横川に根尾を加えた三本柱。年明けに西谷監督は、3人にこんな言葉を投げかけた。

「互いに頼っていたら大会を勝ち抜くことはできない。大会を通じて投げ抜くような意識をそれぞれが持っているのか。そういったところが、市川君との差にあるんじゃないのか」

 西谷監督が名前を挙げ、投手陣に意識させた投手こそ、明徳義塾の右腕・市川悠太。スリークオーター気味の腕の位置から、MAX145キロの直球と、スライダーを中心とした変化球にキレがある投手だ。

 昨秋は高知大会、四国大会、そして明治神宮大会を一人で投げ抜き、馬淵史郎監督に初めての「秋日本一」をプレゼントした。当然、選抜では大阪桐蔭の対抗馬となる。

 選抜を1カ月後に控えた2月下旬、明徳義塾の「野球道場」には小雪が舞っていたが、例年になく自信をみなぎらせる馬淵監督の姿があった。

「神宮大会では大阪桐蔭と戦いたかったよね。(大阪桐蔭は)素材は確かにいいけど、まだ選手の能力だけで戦っている印象がある。付け入る隙はあると思う。うちも(選抜で)優勝に絡む自信はあります。神宮で優勝したチームが、『目標は1回戦突破』とは言えんでしょう(笑)。それなりのチーム力はあります」

「春は投手力」が甲子園の定説だが、市川の存在に加え、打線にも例年以上につながりが期待できる。

「今年は寒いから、どこも仕上がりが遅いと思います。(市川の存在によって)失点が計算できるんで、戦略は立てやすいですよね。以前は下位打線が“試合進行係”みたいに期待はできなかったんやけど、去年のレギュラーも残ってつながりが期待できる。現在の高校野球は春も打たなければ勝ち上がれません。打撃練習に多くの時間を割いています」

 馬淵監督は歴代5位となる甲子園通算49勝。まずは節目の50を目指し、2002年夏以来となる甲子園制覇を狙う。

「智弁和歌山と大阪桐蔭が先に対戦して、疲れ切ったあとにうちが当たればいいんやけど。やっぱり甲子園は近畿勢が有利ですよ。とにかくもう一度、日本一になりたい。そりゃあ、夏の日本一のほうが値打ちがあると思っていますが、もう一度優勝できたら監督を辞めてもいいぐらいの覚悟でいます」

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