4番・遊撃手が定位置となった新チームでは、秋の大阪、近畿大会を制し、明治神宮大会に出場(準決勝敗退)した。彼も藤原同様、非凡な才能をゲームで披露しながら、試合後は常に不満顔の印象が強い。

「去年の日本一も先輩たちのおかげ。新チームとなってからも、勝ち切れていない。そこに脆(もろ)さというか、隙を自覚しています」

 それでも“ネオ・スター”の誕生を待ちわびている高校野球雑誌の最新号の表紙は根尾一色だ。

「まだまだの人間です。足りないもの? すべての技術です」

 生真面目な性格で、練習には理詰めで取り組む。そんな根尾の姿勢を見た先輩から「根尾さん」と呼ばれていたが、雪国育ちの素朴な少年も今では大阪弁が板についてきた。チームでは3番手投手の役割も担い、近畿大会の準決勝近江戦では16三振を奪って完封。一冬を超えて、球速アップにも手応えを得ている。

「MAX(148キロ)は更新すると思うんですけど、それより平均球速を高めていきたい」

 藤原のように「ドラ1」の目標こそ口にしないものの、将来の目標はもちろんプロ野球選手だ。

「大阪桐蔭に入学した理由がそこにあるので……」

 昨夏の甲子園では、3回戦で宮城・仙台育英と対戦し、九回裏の2死までリードしながら、遊撃手からの送球を、一塁を守っていた中川がベースを踏み損ねてしまう。そこから柿木が逆転サヨナラ打を浴びる、悲劇的な結末を迎えた。

 大阪桐蔭の新3年生は、昨春の日本一の経験だけでなく、勝負の怖さも知っている。主将となった中川に「このチームの強みは?」と質問をぶつけると、

「経験だと思います。だけど、その経験が一歩間違えば、マイナスに働くこともある。試合に余裕をもって入ったり、おごりであったり。昨年の選抜で日本一を経験していることで、自分と柿木以外は、甲子園によいイメージがあると思うんですが、その余裕が隙につながれば負けてしまう。そこを恐れています」

 と即答した。

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