岩代さんは志を共にすることで友人の輪が広がることを実感した。

「もし音楽と漫画がコラボしたコンテンツを出したら、政治の世界でギクシャクしていても、アジアを中心とした世界に広がりを持たせることができるのではと思いました」

 また、もう一つのきっかけは、2011年の東日本大震災。命や絆について考えさせられたという。

「当時、被災地ではボランティアが、ゼッケンに『教育』『運搬』とか得意分野を書いているというニュース映像を見ました。それを見て、作曲家が『作曲』と書いても何にも役に立たない。忸怩(じくじ)たる思いになっていました。そんな思いを抱えていると、なぜか知り合いのアーティストや音楽家たちから『何かやらないの?』と次々と電話がかかってきた。岩代は何かやりそう、俺はそう見られているのか、これは何かやらないといけないと感じました。また、11年末には第1子が誕生しました。こういうことが重なり、漠然としてるけど、命や絆について伝えられる作品を出せないかと考えました」

 そして、岩代さんは志を共にした仲間らとともに13年にチャリティーコンサートを開くことができた。

 今回のコンサートを企画するにあたり、岩代さんは手塚プロダクションや浦沢さんに、漫画と音楽のコラボレーションをすることでアジアや世界の人々との絆を深めたいとの思いを伝えると、協力を快諾してくれた。コンサートのテーマは「◯」。切れることのない絆、○には岩代さんのそんな思いが込めてある。

週刊朝日  2018年3月9日号