最近の特徴は「企画もの」だ。期間限定で、高級食材などを使った目玉商品を提供する。

「最近は、かつての食べ放題より値段設定は高いものの通常よりお得な、『ハイコストパフォーマンス』の領域が注目されています」(はんつ遠藤さん)

 たくさん食べる人が多いと店側が損をするようにも思えるが、実は経営上のメリットもある。目玉商品を食べ放題にすると、SNSなどで情報が拡散し、宣伝効果によって集客につながる。飲食業界は慢性的な「人手不足」だが、ビュッフェスタイルにすれば一度に大量に調理できるため、手間を抑えられる。客が自ら料理を取りに行くので、ホールスタッフも減らせる。食材の大量仕入れによるコスト削減や、客単価の固定による売り上げの安定なども期待できる。

 誰でも気になるのは、得するほど食べることが可能か、ということだろう。

 ここで重要なのは原価率だ。売り上げに対する材料費の割合のことで、1千円の料理のうち食材に500円かかっていれば50%となる。原価率が高ければ高いほど、客にとってコスパの良いお得な料理といえる。

 原価率はお店やメニューによってまちまちで、2~5割程度だ。一般的に原価率が高いのは肉やフルーツ、ビールなど。反対に低いのは、ポテトフライや焼きそば、ソフトドリンクなどとされる。すしネタならウニやマグロなどが高く、卵やカッパ巻きなどが低い。

 店側は高いものと低いものを組み合わせて提供することで、全体的に設定した原価率に収め、利益を確保しようとしている。ある人が原価率の高いものばかり食べたとしても、ほかの人は低いものも食べるので、全体としてはバランスがとれることになる。都内のある飲食店経営者は「食べ放題店はたくさん食べる人がいることを前提に、余裕を持って原価率を設定している。『フードファイター』のような想定外の人が来ない限り、赤字になることはない」と明かす。

 その中でも、原価率を高めに設定しているお得な店はあるという。はんつ遠藤さんによると、企画ものの食べ放題は宣伝効果も見込んでいるため、赤字ギリギリの値段設定にしているところもある。ホテルも原価率が高めだと指摘する。

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