林:ムッシュー、すごい(笑)。

辻:根回し根回し(笑)。

林:それは息子さんをパリ大学とかに入れたいから?

辻:きちんと大学は出てほしいと思いますね。彼は去年、落第しそうだったんです。でも、やる気を出せば絶対できる子だと思ったので、「お父さんもわからないけど、一緒に勉強しよう。夜食をつくるよ」と言って二人三脚で頑張りました。家庭教師とも協力してね。

林:ほォー。

辻:息子には好きなユーチューバーがいるんですが、その人はグランゼコールというフランスの東大みたいな大学に通っている人なんです。フランス語のユーチューブって、科学、物理、歴史などの学問をわかりやすく教えてくれるものが人気なんですよ。それを一緒に見て、中身について議論する。続けているうちに、勉強が好きになっていったんです。今年は成績が上がって、いちばん上のクラスに入りました。

林:すごいじゃないですか! あちらは成績が悪い子も入れる大学がたくさんあるのではないでしょう?

辻:真逆ですね。大学に入ることそのものが難しい。日本みたいにお金を出せば誰でも入れる大学は存在しないと思います。バカロレアという日本の昔の共通一次試験みたいなのを受けて、ある程度の成績をとらないと大学に入れない。点数によって行ける大学が決まるんですね。

林:なるほどね。

辻:フランスには学習塾がない。その分中学生も、学校で出された宿題をこなすだけで夜の1時ぐらいまでかかるんです。宿題をみるとわけのわからない分数の計算式が並んでいたり、覚えなきゃいけない詩が100編くらいあったりするんです。

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いや、僕は正直言って帰りたいんです。