「発達障害がマスコミに取り上げられるようになり、専門外来の受診を希望される方が増えています。しかし、実際にASDと診断される方は3割程度であり、ご自分で発達障害と思い込んでいる方が多いのが実情です」(加藤医師)

 ASDの治療は、当事者同士が交流し、コミュニケーションスキルの訓練をおこなうデイケアプログラムの効果が期待されている。加藤医師らは全20回の「発達障害専門プログラム」を作成し、引きこもりなどによる非就労者を対象に週1回、就労者を対象に月2回実施している。

「ASDの特徴は、なぜ自分の言動が周囲の人々を困惑させるのかわからないことです。このプログラムでは障害についての理解を深め、相手を気遣いながら意思を伝える会話の進めかた、感情のコントロールのしかたなどを、講義やディスカッションを通じて学びます。参加者同士に仲間意識が生まれ、互いに支え合い、自己存在を肯定できる利点も大きいといえます」(同)

 参加者の大半はASDの症状やコミュニケーション技能などを評価するテストの成績が向上し、アンケートでは「自己理解が高まった」「対人関係に自信がもてるようになった」「物事への関心が広がった」と答えている。参加後、非就労者の87%は障害者雇用ながらも就労もしくは就労支援施設に移るなど社会との接点をもち、就労者の86%は就労を継続、うち71%は一般雇用を続けている。

 こうしたデイケアプログラムは、全国23医療機関で実施されている。参加希望者は、都道府県や政令指定都市に設置されている発達障害者支援センターに問い合わせるとよいだろう。

「ASDの当事者は、いわば生まれつき『こころの目』が見えにくい方々であり、対人交渉が重要な仕事などは苦手です。しかし、視覚障害をもつ方々の中には聴覚に優れる方がいるのと同様に、パソコンや数字を扱う仕事などでは優れた能力を発揮します。自己理解を深め、能力が生かせる仕事に就かれることを願っています」(同)

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