そこで、記者が実際に「足し算食べ&後食べ」を試してみた。ご飯を横目に、焼き魚とみそ汁、野菜のおかずから先に食べる。いんげんのごま和えにはオリーブオイルをプラスした。

 多くの日本人は、家庭でも学校でも「おかずだけ先に食べちゃダメ。ご飯と汁物、おかずを順番に食べるんだよ」と教わってきた。いわゆる「三角食べ」だ。記者ももちろん、三角食べが染みついていて、おかずだけ食べるのはなんだか落ち着かない。白いご飯につい箸が伸びそうになるのを、何度もこらえた。

 おかずが3分の1になったところで、白米を食べ始める。ご飯の量に対しておかずが足りないかも……というのは杞憂だった。ご飯を半分食べたところで満腹になり、半分残したのだ。

 単に「ご飯を減らす」だけの食事法だったら、欲求不満が募り、いずれ我慢できなくなるだろう。しかし、「足し算食べ」と「後食べ」をしてみたら、少ない量のご飯でも自然と満足できた。また、満腹感がいつもより持続して、次の食事でも「炭水化物のドカ食い」をしなくて済んだ。これを続けていったら、無理なく適正体重に近づくのではないかと思う。

 アブラや野菜に加えて、果物を「足し算」するのも良いと足立先生。

「果物は血糖値を上げにくく、たくさん食べる人はII型糖尿病になりにくいことがわかっています。アメリカの糖尿病学会では、果物を1日300グラム食べることを推奨するほどです」

 特におすすめなのは、食物繊維のほか、ビタミンCやカルシウムなども豊富なキウイだとか。プラスした分、当然糖質は増える。しかし、腹もちがよくなるので、次の食事では自然と食べる量が抑えられるという。何より「引き算」と違って満足度が高く、不足する栄養素を補えるところがいい。

「これまではカロリーがダメ、糖質がダメ、と制限する食事法ばかりでした。そうして日本人の幸せを奪ってきたのは、私たち管理栄養士の責任でもあります。これからは、食べても太らないように、食べ方を工夫するという発想に変えていかなければならないと思っています」(足立先生)

 健康と幸せが両立する食べ方、皆さんも一度試してみてはいかがだろうか。(伊藤あゆみ)

【「足し算食べ&後食べ」の極意】
・おかずを3分の2くらい食べてから主食を食べる
・なるべく15分以上かけてゆっくり食べる
・最初にアブラをとる(オリーブオイルがおすすめ)
・野菜は淡色野菜より緑黄色野菜を積極的にとる
・主食は好きなだけ食べていい
・食物繊維の豊富な果物をプラスする(キウイがおすすめ)
(監修:足立香代子)

週刊朝日 2017年7月14日号より抜粋