このような遺伝性疾患を家族性高コレステロール血症(FH)と呼び、LDL受容体の遺伝子変異を両親から受け継いだタイプ、片方の親から受け継いだタイプの二つがある。

 前者は100万人に1人、後者は200~500人に1人にみられ、日本のFH患者の総数は少なくとも30万人以上と推定されている。FH患者のLDL-C値は、生まれた直後から200~400mg/dLと診断基準を大幅に超える値を示す。

「疫学研究の結果、FH患者は生涯に累積したLDL-Cが一定の閾値(いきち)を超えると冠動脈疾患の発症リスクが高まると考えられています。遺伝子変異を両親から受け継いだ患者は平均12.5歳、片方の親から受け継いだ患者は35歳の若さでこの閾値に達します。このため、治療開始が遅れたり他の危険因子をもっていたりする患者さんは、より強力にLDL-C値を下げる必要があります」(吉田医師)

 新しく登場したPCSK9阻害薬は、LDL受容体の分解酵素であるPCSK9を阻害することによりLDL-C値を低下させる。治験では、スタチンとの併用によりLDL-C値を約70%低下させ、冠動脈疾患の発症を抑制する効果が認められた。

 現在のところ、医療機関で2週に1回または月1回皮下注射するのが基本だが、最近、インスリン注射のように自己注射が可能な製剤もできた。

「FHは早期に発見して治療開始することが求められますが、実際に治療を受けている患者さんはごく少数です。特に太ってもいないのに健診でLDL-C高値を指摘され、しかも心筋梗塞を起こしたご家族がいるという方は、かかりつけ医の紹介で地域の基幹病院や大学病院を受診し、専門医の診察を受けることをお勧めします」(同)

週刊朝日  2017年6月9日号より抜粋