歯周病との関係で高齢者が気を付けなければならないのは、口の中で増殖した菌が何らかのきっかけで誤って肺に入り、炎症を起こす“誤嚥(ごえん)性肺炎”だろう。重症化すると命にもかかわる病気だ。

 実際、日本呼吸器学会や日本歯周病学会も歯周病菌などと誤嚥性肺炎の関係について指摘、診療ガイドラインのなかでも、肺炎予防のために口の中を清潔にしておくケアや、歯周病の治療をすることを推奨している。

 このほか、緊張など、精神的な問題も口呼吸に関係することがわかっている。

「代表的なものに、“呑気(どんき)症”という病気があります。緊張時など、知らないうちに空気をのみ込んで、おなかがパンパンに膨れてしまう。食事もとれなくなり、周りが思う以上に患者さんは苦しいようです。この場合、腸の働きを改善する薬などを使うほか、本人には空気をのみ込んでいることを意識させたり、鼻呼吸のトレーニングなどを行います」(同)

 口呼吸による問題は、健康問題や病気のリスクに限ったものではない。“見た目”も左右すると、前出の斎藤教授は指摘する。

「口呼吸をしている間は口を開けているため、表情筋が緩んだ状態になっています。それが続けば、口角やフェイスラインが徐々に垂れてきます。乾燥から口元にシワが増えるということも考えられます」

 呼吸も浅くなるため、背にもなりやすいようだ。

 このように、健康面でも、美容面でも、百害あって一利なしの口呼吸。どうしたら改善できるのか。

 斎藤教授が勧めているのは、「イー・ウー体操」と「ポッピング体操」という2種類のトレーニングだ。

 イー・ウー体操は、口の周りにある口輪筋の筋力アップを狙う。イーの口で4~5秒、ウーの口で4~5秒キープ。これを1回として7~8回繰り返す。1日2セット程度を目安に行う。イーの口のときに口角を上げるよう意識することがポイントで、左右のこめかみに指を当てて、筋肉が動くのを確かめたり、手鏡で実際に口の動きをチェックしたりするとよいそうだ。

 ポッピング体操は、舌打ちの要領で舌先を口蓋(こうがい=上あごの内側)に付けた後、はじくというトレーニング法。舌の動きを円滑にして、唾液を分泌する舌下腺を刺激するのが狙い。1セット20回を、1日2セット行う。

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