「表情筋もほかの筋肉と同様、加齢で減ってきます。こうしたトレーニングで必要な筋肉を維持しておきたいところです」(斎藤教授)

 こうしたトレーニングに加えて、日常生活では口呼吸のクセを直し、鼻呼吸に変えるセルフケアを。

 食事の際は、意識してよくかむようにし、のみ込むときは少しあごを引く。試せばわかるが、あごを引いた姿勢で食べものをのみ込むと、口から首の筋肉が動くのがわかる。習慣化することで、口の筋肉が鍛えられて、口を閉じたままでいられるようになるという。

 睡眠時にもできるセルフケアがある。斎藤教授の診察を受ける患者の何人かが実践しているのが、寝るときに口にテープを貼るという方法だ。専用のテープもあるが、斎藤教授が勧めているのは、茶色の医療用の紙テープ。ガーゼなどを貼るときに使うものだ。

「数センチに切ったテープを、口に対して縦に貼ります。口に意識がいって、物理的に口が開かなくなるので、自然に鼻呼吸になります。このタイプのテープは粘着力が弱いので、息苦しいときは簡単にはがすことができます」(同)

 この時期、花粉症やアレルギー性鼻炎などで鼻が詰まって鼻呼吸が難しいという人もいるだろう。そういう場合は、まずは原因になる病気の治療を行うこと。毎年、花粉症に悩まされる斎藤教授が予防や症状の軽減を目的に、自ら実践しているのは、“鼻うがい”だ。

「鼻から水や生理食塩水を吸い込み、鼻や口から出す。これを朝や外出先から帰ったときに、手洗いやうがいと同じタイミングで行っています。鼻の中についたほこりや花粉などが取れてスッキリします」(同)

 多くの薬を服用している高齢者に一度見直してほしいのは、薬による口呼吸だ。とくに抗不安薬や睡眠薬などの薬は筋肉をリラックスさせる作用があるため、口呼吸になりやすい。自身の判断で勝手に薬をやめることは絶対にダメだが、心当たりがあったら、主治医に相談してみよう。

 いずれにしても、たかが口呼吸とあなどってはいけない。口から鼻の呼吸に変えるメリットについて、前出の今津院長はこう言う。

「鼻呼吸は口呼吸より抵抗があるため、大きな筋肉を十分に使って肺に空気を取り込みます。それによって自然に腹式呼吸になって肺が広がり、呼吸機能を高めてくれます」

週刊朝日 2017年3月24日号