
週刊朝日が100周年を迎える2022年。東京オリンピックは終わり、国内で少子高齢化はますます進む。社会はどう変わり、テクノロジーの進歩は人類を幸せにするのか。現在のデータに基づき、5年後の未来を描いてみた。
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22年2月12日(土)X町─。
「危ない!!」
助手席の妻の由美子(55)が叫んだのは、住宅街を車で走っているときだった。左の路地から自転車が飛び出してきたのだ。運転席にいるのは私、佐藤誠(60)。とっさに急ブレーキをかけハンドルを右に切ったが、バンパーと自転車の前輪が接触した。
「大丈夫ですか」
自転車の高校生らしい青年に声をかける。車は速度を出していなかったので、自転車は転倒せずにすんだが、前輪はゆがんでいる。
「警察に連絡しますから、ちょっと待っていてね」
スマートフォンを取りに車内に戻る。
「自動ブレーキ(注1)がついていたんじゃないの。警告音もしなかったわ」
妻は、青年にけがはなくて安心したようだが、車のせいだと言わんばかりだ。確かに300万円で新車を買ったばかり。人や自転車にも反応する最新の安全システムがうたい文句だった(注2)。
「反応が遅れた俺が悪いんだよ」
自動ブレーキが作動しなかったのは、夕日の逆光が影響したのか。もともと飛び出しには対応しきれないと説明を受けていたような気もする。いずれにしても「ドライバーの責任」(注3)があるのは間違いない。
でも、完全自動運転の車だったらどうなるのか。実用化が近いとニュースで流れていた。機械の誤作動もある。自動車メーカーが責任をとってくれるのだろうか……。あれこれ考えている間に、警察と青年の親が到着した。
「とりあえず、けがはなさそうなので」
事故処理後に連絡先を交換し、その場は収まった。
「家に帰る前に、ちょっと一息つこう」
コンビニに入る。夕方なのに、人影はまばら。缶コーヒー2本をレジに置く。
「300円になります」
抑揚のない音声が流れる。人手不足は深刻で、コンビニやスーパーでは無人レジ(注4)が当たり前。列に並ぶ無駄な時間が減ったが、味気ない感じもする。
車に戻り、再び夕暮れの街を走ると、明かりがついていない家が多いことに気づく。そういえば、5軒に1軒は空き家(注5)だと先日の週刊朝日で読んだ。創刊100周年記念号の特集記事だった。